記念すべき100回目となる2024年の箱根駅伝。今年も大学陸上界を代表するランナーが箱根路を走り抜ける。ここでは、大会に出場する大学生たちのリアルな日常生活を生島淳氏の『箱根駅伝に魅せられて』(角川新書)より抜粋して紹介。
朝練、門限、消灯時間……。彼らはいったいどのような毎日を送っているのか。(全2回の1回目/2回目に続く)
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朝練と門限、そして消灯時間
長距離の選手たちは、例外なく早起きだ。朝5時にはもう目を覚まして、体を動かしている。朝のジョグは、大学生にとって強くなるための重要な要素である。特に、青山学院大が強豪校へと成長していく過程では、朝から競い合う環境が彼らを強くしていったと思う。
ただし、本当に朝の練習が必要かどうかは、議論の余地がありそうだ。アメリカに拠点を持つ大迫傑は、2019年の福岡国際マラソンを走ったあとのインタビューで、こう話していた「日本の場合、高校も大学も授業があるので、早い時間に距離を稼いでおくという発想だと思うんです。それはそれで構わないんですが、それが5時台でなくてもいいし、8時になってもいいわけです。早朝だと、体調管理が難しいこともありますよね」
たしかに一考の余地はありそうだ。全員が同じ時間に走る必要もないだろう。ただし、一体感の醸成には集団走が向いている。
コロナ禍の影響で、課題が増えた大学生
朝練習を充実させるためには、しっかりとした睡眠が必要になる。早稲田大学の花田勝彦監督は、「体の回復を促すには7時間は睡眠をとって欲しい。ただ、学生も課題などでいそがしいので、なんとか6時間は確保して欲しいところですね。5時間台になってくると、ケガ、体調不良のリスクが高まるのではないでしょうか」と話していた。
いまの学生は授業の出席、課題に追われている。昭和の時代に大学生活をおくった人には、「授業はそんなに出なくてもいいもの」というイメージを持っている人が多いかもしれないが、それは大間違い。特に、コロナ禍でオンライン授業が主流になっていた時期は、課題が増えた。神奈川大の大後栄治監督は人間科学部の教授でもあるが、こう振り返る。
「あの時期は、学生にとってつらかったと思います。それぞれの授業の課題が重たくなったので、睡眠時間を削らないと提出が間に合わない。その後、学生への負担が大きくなりすぎたのではないかという反省があり、先生たちの間でも検討課題になりました」
コロナ禍はそういう意味でも「イレギュラー」だったのだ。