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〈アカデミー賞ノミネート〉 スコセッシ+ディカプリオ&デ・ニーロによる怪作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

2024/01/24

source : 週刊文春CINEMA 2023秋号

genre : エンタメ, 映画

note

デ・ニーロ「悪の凡庸さに、気をつけなければいけない」

 アーネストは底辺から這いあがろうとする男だが、同時におじのヘイルほど冷酷にはなりきれない。何か自分で考えることを拒否しているような男でもある。凡庸な悪の恐ろしさ。その恐怖を、ヘイルを演じたロバート・デ・ニーロは現代に結びつけて語った。

カンヌ映画祭での写真。左からデ・ニーロ、スコセッシ、リリー・グラッドストーン、ディカプリオ  ©Frederick Injimbert/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ

「悪の凡庸さに、気をつけなければいけない。凡庸な悪は今も存在しています。名前は出さないが、誰の話をしているかみなさんご存知でしょう。悪とは体系的なもので、だからこそ恐ろしいし、目を離してはいけない。私が演じた男も凡庸な悪なんだ」と語った後、「トランプもそういう男だ」と結局名前を出して、スコセッシに大笑いされていた。

 音楽は、8月に亡くなった元ザ・バンドのロビー・ロバートソン。先住民族をルーツに持つ彼のこれが遺作となった。『ラスト・ワルツ』(78年)以来の盟友スコセッシは、「ザ・バンド、そして彼の音楽は、この大陸の中心にある最も深い場所の、伝統と悲劇と喜びから来ているようだった」と追悼文を発表した。この言葉は、そのままこの映画に当てはまるだろう。

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INTRODUCTION
禁酒法時代のアメリカ・オクラホマで、石油利権を奪おうとする白人によって先住民オーセージ族の人々が次々殺されていった事件。人種差別によって、政府すらまともに対応しないなか、司法省捜査局長官のエドガー・フーバーは、権威拡大のために若い捜査官を送り込んだ─―。ひとつの事件からアメリカの暗部を照らし出したノンフィクション『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』をマーティン・スコセッシが映画化。愛と欲望と暴力…人間の本質を描き出すスコセッシ節に期待!

STORY
石油で豊かになったオーセージ族の人々から、白人たちは利権や金、ついには命をも奪っていく。そんなころ、おじのヘイル(ロバート・デ・ニーロ)を頼ってオクラホマにやってきたアーネスト・バークハート(レオナルド・ディカプリオ)は、オーセージ族のモリー・カイル(リリー・グラッドストーン)と恋におち…。

STAFF & CAST
監督:マーティン・スコセッシ/出演:レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロ、リリー・グラッドストーン、ジェシー・プレモンス/2023年/アメリカ/206分/配給:東和ピクチャーズ

〈アカデミー賞ノミネート〉 スコセッシ+ディカプリオ&デ・ニーロによる怪作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

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