3月10日(現地時間)に授賞式が行われる第96回アカデミー賞の注目候補作をチェック! 作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、歌曲賞など10部門にノミネートされた『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』。マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロが語る見どころを転載します(初出『週刊文春CINEMA』2023秋号、情報は掲載当時のものです)。
◆◆◆
今年のカンヌ映画祭でお披露目された、マーティン・スコセッシの『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』。上映時間3時間26分も、上映後のスタンディングオベーションの9分も、最長級だった。カンヌにおいて喝采の長さと映画の評価は必ずしもイコールではないのだが、この映画に関してはコンペではないのがもったいないほど、現地での評価も最高クラスだった。
先住民への白人による組織的連続殺人を映画化
記者会見で、主演のレオナルド・ディカプリオは「スコセッシの映画は人間の条件を問う」と語った。言い換えれば、これはもうひとつの「アメリカの悲劇」なのだ。
映画は1920年代のオクラホマで実際に起きた、富裕な先住民オーセージ族への白人による組織的連続殺人を追う。この事件はFBI誕生のきっかけのひとつであり、スコセッシも当初、捜査官を主人公にするつもりだった。
「脚本家のエリック・ロスらと捜査局の視点から脚本を書いていたが、しっくりこなかった。するとレオに『この話の真髄はどこにあるのか?』と聞かれたんです。そこで私はオーセージ族の居留地でゆっくり話を聞く機会を何度か持ち、部族の誰もがこの事件と関係し、今も強い影響を受けていると実感しました。全員に物語がある。原作では記述の少ない(オーセージの女性と結婚した)アーネストにも物語はあるはずで、レオはこの人物を演じたいと言ったんです。そこで進むべき道が見えました。彼は、先住民と白人の間に生まれた愛と裏切りの象徴なんです」
ディカプリオ「スコセッシの映画は人間の条件を問うもの」
ディカプリオは「マーティ(スコセッシの愛称)は、歪んだ人物の中にある人間性を引き出すことがとても上手い。彼の映画は、人間の条件を問うものです。アーネストという人物を作り出す上で、モンゴメリー・クリフトが主演した『女相続人』(49年)、『陽のあたる場所』(51年)、『赤い河』(48年)を、マーティと一緒に観ました。私たちは過去を直視し、清算しなくてはいけないということ。この映画を作るうえで、我々の文化や歴史において大きな学びがありました。とても風変わりなラブストーリーでもあり、人類学的な検証の側面もあります」と語った。