今年7月に北米公開されたクリストファー・ノーランの最新作『オッペンハイマー』は、上映時間3時間のR指定映画。にもかかわらず、全世界で9億5000万ドルを売り上げるという快挙を達成し、2023年に最もヒットした映画の1本になった。批評家の評も抜群で、ノーラン作品の中でも最高傑作という声も聞かれるほどだ。
全米でヒット、賞レースでも大健闘
賞レースでも大健闘している。ノーランはこれで遂にオスカー監督賞を取るかとも予想され、作品、主演男優(キリアン・マーフィ)、助演女優(エミリー・ブラント)、助演男優(ロバート・ダウニー・Jr.)、脚色(ノーラン)など主要部門のほか、作曲、撮影、編集、美術、音響などの部門でも候補入りが濃厚だ。
“原爆の父”ことJ・ロバート・オッペンハイマーの半生を描くこの映画は、オッペンハイマーと、米原子力委員会委員長ルイス・ストロース(ダウニー・Jr.)が、それぞれに過去を振り返る形で展開。終戦後こそヒーロー扱いされたオッペンハイマーだが、共産主義者とつながりがあったことからソ連のスパイの容疑をかけられ、厳しく追及されることになる。
描かれない広島、長崎
原爆投下についてはもちろん触れられるが、広島、長崎の状況は出て来ず、日本が話題に出てくるのも、映画がちょうど半分を過ぎてからだ。広島、長崎を描かなかったことについてノーランは、これはオッペンハイマーの視点で語るものであり、オッペンハイマー自身も一般人と同様、投下をラジオで知ったからだと述べている。
クリストファー・ノーラン監督、主要キャストらが会見
クリスマス休暇でアワードキャンペーン(様々な映画賞獲得のためのキャンペーン)も一時休止となる直前の今月19日、ノーラン、彼の妻でプロデューサーのエマ・トーマス、主要キャストらが、オンラインで会見を行い、製作体験を語ってくれた。
――ノーラン監督、700ページもあるノンフィクション本『American Prometheus: The Triumph and Tragedy of J. Robert Oppenheimer』を脚色するのは難しかったですか?