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クリストファー・ノーラン(監督) 原作本の著者はカリ・バードとマーティン・シャーウィンの2人で、シャーウィンは特に、25年もかけてオッペンハイマーについてリサーチしてきました。あの本には、大勢の人の話がすばらしい形で盛り込まれています。「映画にするのに最適だ」とすぐに思う人は多くないかもしれませんが、僕は、彼の人生の鍵となる瞬間に心を打たれました。

 僕がまず考えたのは、たとえばディナーパーティの場でこの話を人に説明し、その人たちに興味を持ってもらうなら、どんな形で説明するのが良いのかということでした。そんな中で、オッペンハイマーとストロースがそれぞれの場で供述をする様子を並行して語り、互いに織り込んでいく構成を思いつきました。そこが決まると、細かな情報が大量に詰まっているという、原作本のちょっと頭が痛かった部分は、むしろ貴重な資産になりました。必要とする情報はすべてそこにあるのですから。ありがたいことに、巻末には索引があって、探すのも楽でしたしね。

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――エマさんは、クリスが次にこの作品を手がけると聞いて、どう思いましたか?

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エマ・トーマス(プロデューサー) クリスは以前からオッペンハイマーに興味を持っていました。『TENET/テネット』のせりふの中にも、オッペンハイマーが出てきます。あの分厚い原作本を読んだ時、クリスが興味を持つのは理解できましたが、人々を楽しませる映画にできるものなのかは疑問でした。しかし、クリスのビジョンがわかるにつれて、わくわくするようになったのです。とくに、彼が考える映画のラストは、今日の観客の心に響くはずだと思いました

撮影期間はわずか57日

――この映画は、わずか57日で撮影したのだそうですね。今作において一番難しかった部分はどこでしたか?

トーマス 私たちが過去に作ってきた映画と比べて、物理的な意味で難しかったということはなかったと思います。たとえば『インセプション』の脚本を読んだ時は、果たしてどうやれば良いのかと不安でしたから。『オッペンハイマー』の最大の課題は、シリアスなテーマを持つR指定の3時間の映画でありながら、夏に公開して、できるだけ多くの観客に見てもらえるものにすることでした。