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死の直前に人生を後悔しないために…4000人を看取ったホスピス医からの提言「ありのままの自分を受け入れてくれる人を大切に」

source : 提携メディア

genre : ライフ, ライフスタイル

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みなさんも、ご自身のことを考えてみてください。

仕事の予定と、恋人との約束がバッティングし、「今回はどうしても仕事を優先させたい」というとき、「どうして自分の約束を軽んじるのか」と怒る相手よりも、あなたの仕事を心から応援し、「自分との約束は今度でいいから」と言ってくれる相手に、「自分の気持ちをわかってくれている」と感じるのではないでしょうか?

逆に、仕事の予定と子どもの学校の行事が重なり、「今回はどうしても学校の行事を優先させたい」というとき、「仕事を優先しろ」という上司より、「仕事は明日でもいいから、今日は学校へ行きなさい」と言ってくれる上司に対し、「自分の気持ちをわかってくれている」と感じるのではないでしょうか?

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また、健康で体力があるときは、自分一人である程度大事なものを守ることができるかもしれませんが、老いや病気により体の自由がきかなくなると、誰かの力を借りなければならなくなります。

大事なものであればあるほど、誰にでも任せるというわけにはいかないため、不安になったり焦ったりする人もいるでしょう。

しかしそのようなとき、自分の優先順位を理解してくれる人がいれば、人は安心してその相手の力を借り、穏やかな気持ちになることができます。

他者、組織、社会のために自分を犠牲にしてはいけない

なお、世の中では往々にして、他者のため、組織のため、社会のために自分の優先順位を下げることが誠実さだと考えられがちですが、私はそうは思いません。

もちろん、ほかの人の役に立ちたい、組織や社会の役に立ちたいという気持ちは大事ですが、自分が本当に大事にしたいもの、「自分がやるべきだ」と思っていることを犠牲にし、他者の都合を一方的に優先させるのは本末転倒であり、何よりも自分に対して不誠実な生き方になってしまいます。

私は、人にはそれぞれに与えられたミッションがあり、そのミッションを果たすこと、自分の役割を果たせたと思えること、自分の大事なものを守れたと思えることこそが、本当の幸せにつながると思っています。