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「ロシア軍では国内の刑務所から囚人を勧誘」ウクライナ軍の訓練を現地取材…スパルタ教官の“危険すぎる行動”

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2024/02/26

genre : ニュース, 国際

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 歩兵部隊では前線での突撃訓練をしていた。実弾を使っているが近くで撮影可能だという。機関銃を片手に訓練兵が走り出した。私もそれについていく。腹ばいになったり、中腰になって銃を撃ちまくる。私の後方では老齢の教官が「ダバイ! ダバイ!」(行け! 行け!)と声をかける。教官が何か言いながら前方に伏せている兵士に物を投げるのが視界の隅に見えた。すごく嫌な予感がした私は投げた方向と逆の方向へ進んだ。

 伏せている兵士が顔を上げると教官が「グレネードだーっ」と叫ぶ。それを聞いた兵士が再び顔を伏せると兵士の隣でドカンッと爆発し土煙があがった。さっき教官が投げた物は訓練用のグレネードだった。訓練用と言っても近くで爆発すれば手や足など吹っ飛びそうな威力だ。そういうことはちゃんと事前に言って欲しい。恐らく訓練を受けている兵士も聞かされていなかったのだろう。実戦を想定しているのだ。

 スタート地点まで戻ると再び走り始めた。次はグレネードではなく教官が「敵が攻撃してきたぞ!」と言っているのだろうか、叫びながら実弾を後ろから兵士の近くに撃ちまくっている。映画『フルメタル・ジャケット』の鬼教官、ハートマン軍曹もそこまではやらないだろう。せいぜい「お前はウジ虫だ」と罵るくらいだ。

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突撃訓練で兵士の近くで訓練用のグレネードを爆発させる

 戻ってきた兵士はヘロヘロになっていた。アンドリが同情したのか、おやつに持ってきていたペプシ缶を兵士にあげていた。私はアンドリに「グレネード投げるって聞いてた?」と聞くと、アンドリも「聞いていない。ビビった?」「ビビったわ」というような会話をした。

兵士の近くに銃撃を加える教官

ウクライナ軍の兵士・兵器不足が深刻な問題に

 今ウクライナ軍では兵士不足が問題となっている。ゼレンスキー大統領は昨年12月に最大50万人の追加動員を求めている。激戦地のアウディイウカでは明らかに兵力が足りないという指摘があり、兵士の交代もほとんど行われておらず、疲弊しているそうだ。そうした背景もあるのか、2月8日にゼレンスキー大統領はザルジニー総司令官を解任し、後任にシルスキー氏を指名した。その後2月13日にはアウディイウカに予備戦力が投入されたと報道があった。だが、アウディイウカは依然として包囲されたままであり、予断を許さない状況が続いている。