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「柳葉(敏郎)を殴るってどういうことだ」チョロ役でブレイクするも、大ケンカ…中野英雄(59)が語る、『愛という名のもとに』がもたらした光と闇

中野英雄インタビュー #3

2024/03/09
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 そうしたら、フジのプロデューサーが僕に「おい、野島は中野の写真を置いてチョロって役を書いてるぞ」と教えてくれて。「エーッ。あのときのコーヒーのおかげかな」って。

翔さんが見かねてVシネに引っ張ってくれた

――チョロ役でのブレイクが重荷になったことは。

中野 ありましたね。役者としてやっていく自信が付いた役だったけど、外からだけでなく自分のなかでもチョロのイメージで固まってしまうんですよ。チョロって、いまで言ういじられキャラなところもあるし、滑稽な存在だったでしょ。実際、なんか言われても「テヘヘ」みたいにやってましたから。

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 それに一世風靡で付き人をやってたから、ずっと低姿勢でいなきゃいけない、礼儀正しくしていなきゃいけないっていうところに縛られてたところがあって。気性が荒いのに、そういう態度でいなきゃいけなかったから苦しくてね。ギバさんとのケンカなんかもそうだけど、時々爆発しちゃってましたから。で、無理に抑え込んでるから、礼儀の正しさが、周囲からは嘘くさいというかわざとらしく見えてたんでしょうね。それを某テレビ局のディレクターに指摘されるんですよ。

――なんと言われました?

中野 「お前のそういうの、わざとらしいんだよ。ものすごく不快」「は?」「素を出せよ!」「出していいんですか?」「いいに決まってんだろ!」って、「じゃあ、出してやるよ!」ってケンカしちゃって。そこから横柄になって、テレビからも映画からも呼ばれなくなって。見かねて、翔さんがVシネに引っ張ってくれたんです。

 翔さんは「もともとお前が持ってたものを出せてよかったじゃん」「そもそもお前、こっちの世界だろ」と言ってくれましたけどね。

たけしさんのそばに行ける話を振られて「是非!」と即答

――Vシネ、オリジナルビデオで活躍するなか、北野武監督の『アウトレイジ』(2010年)に。たけしさん扮する大友にカッターナイフで指詰めを迫られ、顔を切りつけられて、復讐を挑む村瀬組若頭・木村を演じていますが、こちらの出演経緯は。

 

中野 たけしさんが東條英機を演じた『日米開戦と東條英機』(TBS・2008年)に出たんです。僕は、東条に付いている秘書官の赤松貞雄を演じていて。

 まず、それに出ることになった経緯を話すと、渋谷でTBSのプロデューサーにばったり会ったんですよ。「お前、なにしてんだ?」って聞かれて、Vシネしか出ていない話をしたら「今度、たけしさんが東條さんをやるんだけど出るか?」と。だけど「セリフは一切なしで、坊主頭にしてもらう。お前と同期の役者がメインどころをやるけど、平気か?」と。

 僕、いつかたけしさんに土下座でもなんでもして、映画に出させてもらおうと考えていたんですよ。そこへ、たけしさんのそばに行ける話を振られたから「是非!」と即答ですよ。

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