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「約12時間も通報しなかった」「1週間後に彼女は実家に現れた」狂言だったのか? 実際に起きた“誘拐事件”の真相は

2024/03/03
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「実話を基にした映画」は多いが、これは「映画を基に語られた驚愕の実話」である。2014年公開のデヴィッド・フィンチャー監督作『ゴーン・ガール』をご存じだろう。夫の浮気を知った妻が失踪事件を偽装し、夫に復讐する戦慄の物語だ。翌年、この映画の内容を彷彿とさせる不可思議な誘拐事件が発生し、全米が騒然となった。その事件の一部始終を描いたドキュメンタリーが『アメリカン・ナイトメア:誘拐事件はなぜ“狂言”と言われたのか?』(ネットフリックスで配信中)。

 発端は2015年3月の昼下がり、1本の緊急通報だ。

「昨夜、恋人が誘拐された」

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 通報したのは彼氏のアーロン。自宅で就寝中に何者かに襲われ、縛られ視界を塞がれた。鎮静剤を飲まされて意識が朦朧とする間に彼女のデニースが連れ去られたという。

「誘拐は真夜中だったのに、彼は何時間も通報しなかった」

 と、地元紙記者も首を捻る。通報は誘拐発生から約12時間後。犯人の身代金要求も僅か1万5000ドルだった。不審な点は他にも。アーロンと元カノのアンドレア、そして今カノのデニースは理学療法士として同じ病院で働いていた。アーロンには元カノへの未練があり、今カノのデニースは傷つき、関係にひびが入っていた。記者が当時を振り返る。

©佐々木健一

「誰もが思った。彼氏が誘拐話をでっち上げ殺したのだと」

 だが1週間後、事態は急変する。行方不明のデニースが約640kmも離れた彼女の実家に突如現れたのだ。目立った外傷もなく、フードを被り人目を避ける彼女。疑いの目は深まり、地元警察は会見で「迷惑なお騒がせカップル」と糾弾し、マスコミは“現実版『ゴーン・ガール』事件”と書き立てた。果たして真相は……。

 虚構の物語が人々の目を眩ませ、現実を歪める。あってはならないが、そんなことが本当に起きたことに震撼させられるだろう。全3回、怒濤の展開。刮目して見よ。

INFORMATION

『アメリカン・ナイトメア:誘拐事件はなぜ“狂言”と言われたのか?』
https://www.netflix.com/jp/title/81620852

「約12時間も通報しなかった」「1週間後に彼女は実家に現れた」狂言だったのか? 実際に起きた“誘拐事件”の真相は

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