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安易に「認知療法」を勧めない――「うつ」に関する10の誤解 9・10

與那覇 潤『知性は死なない』より特別公開

2018/04/16
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誤解10 うつ病は「認知療法」でなおる

 抗うつ薬もカウンセリングも万能ではないことがあきらかになって、うつ病治療の手段として注目されている手法に認知療法、ないし認知行動療法(CBT, Cognitive Behavioral Therapy)があります。私がかよっていたデイケアにも、「このクリニックは認知行動療法をやっていると聞いて、かようことに決めました」とおっしゃってみえた方がいるくらい、社会的な知名度も高まっている治療法です。

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 治療者(おおくは臨床心理士)と患者が一対一でおこなう療法のほかに、複数の患者でグループを組んでおこなう集団認知行動療法(CBGT, G はGroup の頭文字)もあります。

 私もデイケアでCBGTを受講しましたが、なにをするかというと、生活のなかで自分自身が不快な気分になったり、悲観的な考えを持ってしまった場面を取りあげて、「ほんとうにそうなのか。むしろ自分の考え方(認知)に特有のクセがあるせいで、必要以上にものごとを悪くとらえている可能性はないか」を検討するのです。(32)

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 これはたしかに、うつからの回復においては、有効な局面があります。