躁うつ病(双極性障害)を患い、大学を休職、ついには離職に至った與那覇潤さん。このたび『知性は死なない――平成の鬱をこえて』を上梓し、詳細に体験を著しました。本書の第2章より、「『うつ』に関する10の誤解」を5回シリーズで公開します。
誤解5 うつ病は「過労やストレス」が原因である
昔にくらべれば、うつ病にたいする社会の理解も深まっている――こういうときに多くの人が思い浮かべるのが、「うつになった人は、過酷な労働環境の犠牲者だ」という認識でしょう。私は「うつはこころの風邪」とは異なり、病者の権利を守るという意味では、このいい方をむげに否定するべきではないと思っています。
もちろん、その裏返しで「大学教員なんて、恵まれた職場じゃないか。ブラック企業でもないくせに、うつ病になるなんて甘えだ」という誹謗(ひぼう)をこうむったことはあります。しかし、ほんとうに違法すれすれの現場で働かされている人の気持ちを思えば、そんな中傷くらい、たいしたことではありません。
とはいえ医学的には、これは誤っています。