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うつ病は「ストレスが原因」とは限らない――「うつ」に関する10の誤解 5・6

與那覇 潤『知性は死なない』第2章を特別公開

2018/04/14

genre : ライフ, 医療, 読書

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誤解6 うつ病に「なりやすい性格」がある

 これもまた、よく耳にする言い方です。おそらく、日常の会話でなりやすいとされる性格の1位は「メンタルが弱くてすぐ投げ出す人」、2番目は「いつも暗くてひきこもりがちな人」といったところでしょうか。これが転じて「そんな性格だから病気になったんだ」、はては「おまえは病気じゃなく、性格がダメなだけだ。なまけているだけだ」といった言い方になることもあるようです。

 しかしながら、これは二重の意味で根本的にまちがっています。

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 たとえば、アメリカのロック歌手ブルース・スプリングスティーンは、2016年に刊行した自伝で、長年うつ病に苦しめられてきた過去を語って話題になりました。「ボス」の愛称で知られ、力強いサウンドと政治的なメッセージをこめた歌詞で労働者階級の地位向上に努力しつづけた彼は、「メンタルが弱くてすぐ投げ出す人」でしょうか。

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 あるいは、ハリウッドの名優ロビン・ウィリアムズは2014年、うつ状態のなかでみずから命を絶ったといわれています。『ミセス・ダウト』や『パッチ・アダムス』などの作品で世界を爆笑の渦(うず)にまきこみ、ナンバーワン・コメディアンの名をほしいままにした彼が、「いつも暗くてひきこもりがちな人」でしょうか。