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佐々木 俊尚
2018/04/09

「アンダークラス」の格差は広がるばかり

 ロールズの本が出てから半世紀近くになろうとしているけれども、この哲学はいまの時代だからこそ再び重要性を増していると思う。私たちの社会に、他人に鉄槌を下す「正義」ではなく、フェアであり、みんなが暮らしていける正義を、取り戻さなければならない。

 キモくて金のないおっさん問題は、見えにくいけれどもとても深刻で大きくなっている。早稲田大学教授の橋本健二さんは著書『新・日本の階級社会』(講談社現代新書)で、非正規雇用が新たな階層になってきていることを指摘している。同書は現代日本をさまざまな面から分析し、激増する非正規労働者が「『階級以下』の存在、つまり『アンダークラス』」という新たな階層になっていることを解き明かしている。

 同じ労働者でも、正規労働者と非正規であるアンダークラスの間の「異質性」は大きくなっている。収入は2倍も離れ、貧困率はなんと5倍もの差がある。健康状態、ストレス、人間関係、不安など何もかもが両者のあいだではかけ離れている。

「それは、文字通りか、あるいはそれなりにかの違いはあっても、安定した生活を送り、さほど強い不安もなく、満足や幸せを感じながら生きることのできる人々と、これができない人々の違いである」(『新・日本の階級社会』)

「いまや資本家階級から正規労働者までが、お互いの利害の対立と格差は保ちながらも、一体となってアンダークラスの上に立ち、アンダークラスを支配・抑圧しているといえないだろうか。これは、いわば四対一の階級構造である」(『新・日本の階級社会』)

 このひどい状況を終わらせるためにこそ、いま新しい正義が求められているのだ。

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