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「親友」という言葉の奥にあるものは…気鋭の歌人・岡本真帆が「大切な友人に会いに行きたくなる映画」

映画『ソウルメイト』

2024/03/16

source : 週刊文春CINEMA オンライン オリジナル

genre : エンタメ, 映画

note

 平易な言葉で日常の一瞬に光を射す短歌で注目を集める歌人・岡本真帆さんは、年間200 本鑑賞を目標とするほど映画好き。最近とくに心を揺さぶられたという作品が韓国映画『ソウルメイト』だ。小学生の頃から続く親友関係に重ねた想いとは――。

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 親友と呼べば陳腐な響きだしあなたは一体なんなんだろう  岡本真帆 

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 出会った瞬間に強い繋がりを感じる。

 そんな運命とも言える出会いは、人生にいくつあるだろう。あとから振り返って「自分の人生を変えてくれる出会いだった」と感じることはあるけれど、最初の瞬間から運命を確信する出会いは、滅多にない。

 だから『ソウルメイト』のミソとハウンの二人の出会いと絆は、とても眩しくて羨ましいものに映る。

 性格も育ってきた環境も正反対のミソとハウン。二人の共通点は絵を描くことが好きなことだった。複雑な家庭環境で育ったミソは、ハウンの小学校に転校してきた初日から教室を飛び出す。一人遊びをしているミソのもとに、荷物を届けに来てくれたのがハウンだった。言葉を交わすうちに、お互いに惹かれていくミソとハウン。そこから徐々に二人の距離は近づき、やがて唯一無二の親友になっていく。

「春の午後の優しい日差し」と「反射するミラーボール」の二人

 ミソとハウンのキャラクター像は、明確に異なるものとして描かれている。たとえば二人が描く絵のタッチ。授業中ハウンがこっそりノートに描く先生の似顔絵は写実的で、その正確さは写真と見間違うほどのものになってゆく。一方ミソの描く絵は常識に囚われず自由だ。拾ってきた猫の絵を二人で描くとき、ミソは猫の姿だけではなくその「心」まで描く。変かな、とばつが悪そうにするミソのことを、ハウンはまったく批判しない。むしろ嬉しそうに、自分にはない自由さをもった存在として、眩しそうに見つめている。

猫のタッチもまったく異なるハウン(左)とミソ(右) © 2023 CLIMAX STUDIO, INC & STUDIO&NEW. ALL RIGHTS RESERVED.