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藤井聡太、連覇を逃す 「最高勝率」更新には一歩及ばず、それでも期待がかかる「大棋士の記録」とは

藤井聡太、連覇を逃す 「最高勝率」更新には一歩及ばず、それでも期待がかかる「大棋士の記録」とは

2024/03/18
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 3月17日に放映された第73回NHK杯戦決勝は、藤井聡太竜王・名人VS佐々木勇気八段という2年連続の同一カードとなり、昨年のリベンジを果たした佐々木が初優勝した。また同日に行われた第49期棋王戦第4局に藤井は勝ち、棋王防衛を決めた。この結果、藤井の2023年度成績が46勝8敗、勝率0.852で確定し、中原誠十六世名人が1967年度に記録した年度最高勝率の0.855(47勝8敗)の更新にはあと一歩で及ばなかった。

 前人未到の全八冠制覇達成など、今年度の藤井の活躍についていまさら触れるまでもない。しかし、ここまでの活躍をしても勝率記録の更新には至らなかった。60年近く孤高の地位にある「勝率0.855」の数字に迫ってみたい。

 そして、勝率記録以外でも藤井に更新の期待がかかる、過去の大棋士の記録はどのようなものがあるのか。それぞれ見ていきたい。

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今期の藤井聡太竜王・名人は、史上初の「八冠」を達成した ©文藝春秋

藤井聡太竜王でも超えられない中原十六世名人の「勝率0.855」

 まずは年度勝率記録について。中原十六世名人との比較対象として、今年度(3月17日まで)の藤井と藤本渚五段、95年度の羽生善治九段を挙げたい。いずれも勝率記録の更新に期待が掛かっていた。

 まずは中原の記録から、47勝8敗の内訳はそれぞれ、

 第22期順位戦C級1組 11勝1敗

 第7期十段戦 1勝1敗

 第9期王位戦 4勝0敗

 第17期王将戦 3勝1敗(二上達也に1敗)

 第11期棋聖戦 11勝3敗(升田幸三に1勝、二上達也に1勝、大山康晴に1勝、タイトル戦五番勝負は山田道美に2勝3敗)

 第12期棋聖戦 1勝0敗

 第15期王座戦 0勝1敗

 第16期王座戦 6勝0敗

 第17回東西対抗勝継戦 3勝1敗

 第1回日本将棋連盟杯 2勝0敗

 第11回古豪新鋭戦 5勝0敗

 となっている。

数多くの記録を打ち立ててきた中原誠十六世名人 ©文藝春秋

 続いて今年度の藤井、46勝8敗の内訳は以下のとおり。

 第36期竜王戦 4勝0敗(タイトル戦七番勝負は伊藤匠に4勝0敗)

 第81期名人戦 4勝1敗(タイトル戦七番勝負は渡辺明に4勝1敗)

 第64期王位戦 4勝1敗(タイトル戦七番勝負は佐々木大地に4勝1敗)

 第8期叡王戦 3勝1敗(タイトル戦五番勝負は菅井竜也に3勝1敗)

 第71期王座戦 7勝1敗(タイトル戦五番勝負は永瀬拓矢に3勝1敗)

 第49期棋王戦 3勝0敗1持将棋(タイトル戦五番勝負は伊藤匠に2勝0敗1持将棋)

 第73期王将戦 4勝0敗(タイトル戦七番勝負は菅井竜也に4勝0敗)

 第94期棋聖戦 3勝1敗(タイトル戦五番勝負は佐々木大地に3勝1敗)

 第17回朝日杯 3勝1敗

 第31期銀河戦 4勝1敗

 第73回NHK杯 4勝1敗

 第44回将棋日本シリーズ 3勝0敗