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契約書がなくてもウソをつかない、約束を破らない…“駐日ジョージア大使”が語った「日本のビジネスパーソンの素晴らしい所」

『日本再発見』より #1

note

 たとえば清掃員の方がそうですね。外国人は「日本は道もトイレも、どこに行ってもきれいだ」と驚きます。それはもちろん日本人ひとりひとりが汚さないように気をつけていることもありますが、清掃をされる方のクオリティがすばらしいからです。

まるで心を読んだかのような「接客サービス」

 先日もそれを実感することがありました。デパートの化粧品売り場に行って、保湿用のアフターシェーブローションを探していたのですが、売り場の販売員の女性は非常にテキパキと質問に答えてくれました。失礼ながら初めて知ったブランドの店員さんでしたが、「うちにはアフターシェーブローションはないけれども、ローションはあるし、アフターシェーブローションはこのフロアならあそこで売っているかもしれない」と即座に調べ、その上で「うちの保湿用ローションはこんな感じです」と、ぴかぴかのきれいな手で私の手に塗りながら商品説明をしてくださいました。

 その流れはあまりにもスムーズで丁寧で、すべてがこちらの心を読んだかのような対応でした。「この人はサービスのプロだ」と感じ、「こんなによくしてもらうのは悪いな」と思ったほどです。その方に教えていただいた商品を買うことを伝えると、やはり効果が最大限発揮されるような使い方や注意点をひとつひとつわかりやすく教えてくれました。その接客からは、自分の仕事に誇りと責任を持った上で楽しんでいることが伝わってきました。

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 このように、何気なく足を運んだデパートにこのレベルのスタッフがいるのが日本です。外国人が予期しないようなところで、ものすごいプロフェッショナルと出会えるのが日本なのです。

 私が勤めていたキッコーマンにも長年蓄積されたノウハウが山ほどありました。外に出さないのはもったいないと思えるような独自のノウハウがローカルに閉じた形で使われていたりするのです。日本では庶務の女性が会社の歴史に通暁していて、何十年も前の出来事を生き字引のように語れたりすることもありますよね。

 しかも驚くべきは、従業員と企業とが契約を結んでいるがゆえに徹底してプロフェッショナルとして振る舞っている、というわけではないことです。

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