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"日大出身”、"ゆとり世代”の作家が問いかける「ブラック部活問題」

額賀澪インタビュー_後編

note

『拝啓、本が売れません』が話題の“ゆとり世代の新人作家”額賀澪さん。最新作で「部活」をテーマにした彼女は、実は日大出身。ブラック部活問題と日大タックル問題について、思いを語る。※前編[『拝啓、本が売れません』が話題の作家の最新作は売れるのか?]より続く

――7月13日には単行本『風に恋う』が発売になります。

額賀 はい、私の10冊目の単行本ということで、初心に返るというか、デビュー作の『屋上のウインドノーツ』と同じ吹奏楽を題材にしつつ、年齢差のある二人の主人公の話を書こうと思いました。

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 「全日本吹奏楽コンクール」という吹奏楽の甲子園を目指す現役の高校生とそのコーチの話です。現役の高校生は一度、燃え尽き症候群で吹奏楽の道を諦めたという経緯があります。コーチの方は高校時代に全国大会に行き人生のゴールデンタイムを過ごしたのに、社会人になってからはパッとしない生活をしている。二人が出会い、全日本コンクールを目指していく。その中で二人は何を思って、どう変わっていくのか……という物語です。

 担当の編集者から「王道のコンクールものをやりませんか」と言われたのは、去年の1月で、ちょうど恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』が直木賞を取り、本屋大賞はどうだろうと話していた時期でした。だから、まずは『蜜蜂と遠雷』を読むところから始めたのですが、読めば読むほど私の選択肢の幅が狭まっていきました(笑)。でも読んでよかったと思います。この1年間ずっと私のパソコンの横に置いてありました。ノートパソコンの横にドンッて置いて。あんま読まないようにしていましたけど。

©文藝春秋

――それは、なぜ?

額賀 たとえば、音の描写や演奏のシーンをどう表現しようかって思ったときに手にとって、すごく良い表現を見つけちゃったときに「あ~見つけちゃった……」ってなるじゃないですか(笑)。それはもう使えないし、使えないけどめちゃくちゃ良い表現だなーって思いながら書き進めないといけないなんて、辛いですよ。開かないようにブックバンドで縛って留めていました。

――『拝啓、本が売れません』に『風に恋う』の第1章を収録したことは、効果がありましたか?

額賀 そうですね、「いいところで終わっていて、先が気になるので本出たら買いますね」という声をいただいています。それに、SNSで紹介すると、「楽しみです」という反響がいつもより多いです。普段から私の本を読んでくださっている人の中には「あえて読まないでおきます」とわざわざ伝えてくださった方もいました。

 そういうリアクションが、『風に恋う』の発売の2カ月~3カ月前の、ちょうど最後のひとふんばりというタイミングで聞こえたのがすごく良かったです。「がんばんなきゃな」と思いました。「この本はまだ発売になっていないけど、もう読者がいるんだから」と。余計な描写は削ってちょっとでも薄くしてやろうと思って削りに削りましたし、書き出しから書き替えましたし。