一昨年(2016年)に放送されたドラマ『重版出来!』(TBS系)では、大御所マンガ家・三蔵山龍を小日向文世が、彼のもとで長年アシスタントを務める沼田という男をムロツヨシがそれぞれ演じていた。両者は奇しくもきょう1月23日が誕生日である。1954(昭和29)年生まれの小日向は64歳、1976(昭和51)年生まれのムロは42歳となった。

およそ15年間“暗黒の時代”を過ごしたムロツヨシ ©文藝春秋

『重版出来!』の沼田は、マンガ家として独立を目指しながらも一向に芽が出ないという人物だった。下積みが長かったという点では、演じたムロ自身とも共通する。東京理科大学在学中、中井貴一主演の舞台『陽だまりの樹』を観て「俺がやりたいことはこれだ!」と直感、俳優になるため大学もやめたが、「まさかその後15年間、暗黒の時代が続くとは思わなかったです(笑)」(『週刊朝日』2016年4月29日号)と後年語ったほど、長らく雌伏の期間を送る。ようやくブレイクしたのは30代後半、2013(平成25)年にはNHKの連続テレビ小説『ごちそうさん』で風変わりな大学教授を演じ、一般にも知名度を高めた。作品ごとにキャラクターをがらりと変えるムロだが、このときの教授役にいたっては年齢も不詳で、一見しただけでは彼とは気づかないほどだった。

グラフィックデザイナーを諦め、俳優を志した小日向文世 ©文藝春秋

 一方の小日向文世もまた、ブレイクまでは紆余曲折があった。北海道三笠町(現・三笠市)出身の小日向は、デザインの専門学校に入るため上京、当初はグラフィックデザイナー志望だったが、スキーで腕に大けがを負って断念。やがて俳優になろうと思い立ち、文学座を受験するも不合格、このあと、バイト仲間の紹介でしばらく俳優の中村雅俊の付き人をやっていたが、中村の勧めもあり、23歳となった1977年、劇団「オンシアター自由劇場」に入った。当初はなかなか役につけなかったが、のちにはヒット作『上海バンスキング』などに出演、劇団の主要メンバーとして活躍するまでになる。1996年の劇団解散後は一時仕事が途絶えたものの、三谷幸喜作・演出の舞台『オケピ!』(2000年初演)に出演したころから再び注目され始める。2001年のドラマ『HERO』(フジテレビ系)で広く知られるようになり、08年には『あしたの、喜多善男~世界一不運な男の、奇跡の11日間~』(同)で連続ドラマ初主演も務めた。やはり三谷作・演出による舞台『国民の映画』(12年初演)で演じた主人公ゲッベルスは高く評価され、読売演劇大賞の最優秀男優賞を受賞している。

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 ムロツヨシも俳優になるきっかけは演劇だっただけに、自らの作・演出・出演による喜劇の舞台『muro式.』を2008年から続けてきた。今春にも公演が予定されているが、昨年刊行した初の著書『ムロ本、』(ワニブックス)では、10回目となる今回の公演をもって一度区切りをつけたいと明言している。