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優勝目前のライオンズ 最後にベテランの力が必要な理由

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/09/15

 ペナントレースも大詰めを迎え、優勝を争うチームに対し「ベテランの力が必要」の文字を目にしたり、言葉を耳にする。ベテランとは「豊富な経験を持った熟練者」と辞書にある。なので、野球では「ビッグイニング」同様、明確な数字の基準はない。感覚的には30歳を過ぎ、レギュラーをつかんで10年以上活躍している選手にあてはまるのではないか。

 埼玉西武には10月に43歳を迎える松井稼頭央が超ベテランとして存在している。しかし、出場試合数は少なく試合の戦力というよりベンチ内でのアドバイザー的な役割になっている。この松井がベンチに座っていることで、ともに35歳を迎えた中村剛也と栗山巧が力を十分に発揮できている。8歳年上の現役選手が同じベンチ内にいれば、「まだまだ自分は」の思いは強いだろう。

帰ってきた背番号「7」超ベテラン・松井稼頭央

中村と栗山 好対照の両ベテラン

 過去、6回の本塁打王のタイトルを獲った中村はシーズン序盤から不調で、故障も発生したためファーム調整を余儀なくされた。1軍復帰後もしばらく調子は上がらなかったが、7月、8月は「夏男」の本領を発揮し本塁打を量産して8月の月間MVPにも選ばれた。昨季から主将の肩書きを浅村栄斗に譲り渡した栗山も、ノビノビとした動きと勝負強さでファンを魅了している。最近、お互いに刺激し合っている証明として、2人が1試合に2本以上安打する「アベックマルチヒット」が今月に入って9試合で4度ある(9月12日現在)。

8月の月間MVPを受賞した夏男・中村剛也

 01年のドラフト会議で大阪桐蔭の中村が2位、育英の栗山が3位指名で入団している。ちなみに西武の3位は「当たり順位」といわれ、今季のスタメンに名を連ねる浅村、秋山翔吾、金子侑司、外崎修汰、源田壮亮がそれにあたる。同じ関西の高卒選手で気の合う二人も性格はまったく異なる。寡黙で闘志を表に出さない中村。こちらの質問には言葉を選びながらもしっかりしゃべる栗山は、闘志を表に出すタイプ。

 打席で三振を喫した時、苦笑いを浮かべ首を振りながらベンチに戻る中村に対し、栗山は胸を張って堂々と帰ってくる。これも好対照。栗山がまだ5、6年目時の話。好機で凡退し、ベンチ裏に出てきて悔しさのあまり置いてあったパイプ椅子を投げ飛ばし、ガシャーンという音が響き渡った。数秒後、冷静さを取り戻した栗山はその椅子をキチンと元に戻していた。中村は一切モノには当たらないのは、その風貌からも伝わってくる。

 前回08年に優勝した時にチームに在籍していたメンバーを見ると、1軍の試合に出場した選手はこの2人と炭谷銀仁朗の3人だけ。31歳になった炭谷はベテランとは言い難い。見た目は別として。02年の優勝時には松井も在籍していたが、前回の時はメジャーリーガーとして活躍していた。若い選手たちはこの優勝経験者から聞く言葉のひとつひとつがプラスになっていくだろう。