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国土交通次官が初めて“踏み込んで”語った「どうするJR北海道」

森昌文 国土交通次官インタビュー #1

2018/09/10
note

ハード面だけの防災行政だけではない時代に

――リスク・コミュニケーションを徹底する上での、現実的な課題は何でしょうか。

 それは情報格差ですね。ハザードマップは各自治体と協力してつくっていますが、おじいちゃんおばあちゃんがパソコンやスマホでそれを確認できるのかという問題もありますよね。防災情報についてプッシュ型のメール通知をやっていても、携帯電話を持っていない方もいる。

 

――情報というソフト面での防災行政に力を入れるということですが、逆に言いますとハード面での対策にはもう限界があるということですか。

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 もちろんハード面の整備は重要ですし、中小河川にも簡易水位計を設置するなどの対策もしていきます。でも、今の災害の規模を見ると、それだけでは対応できません。西日本豪雨でも、近くに砂防ダムができたので大丈夫だと思っていたら被害にあったという方がいました。一番対策が進んでいると思われがちな東京でも、1時間50mm以上の雨が限界です。西日本豪雨のような1時間80mmとか100mmとかの大雨になれば、川はあふれるし下水道や地下の放水路も雨水で一杯になってしまいます。想定を遥かに超えるような被害が発生しうる今の状況での防災対策は、ハード面だけに頼るのではなくソフト面にも力を入れていく必要があります。

 

インフラの老朽化、どうする?

――インフラの老朽化も気になるところです。イタリアのジェノバで橋が崩落したという事故もありました。日本は大丈夫なのか、と。2012年には笹子トンネル天井板落下事故も起きています。

 韓国やアメリカでも似たような事例はありますよね。日本でも前回の東京オリンピック時につくったものが50年、60年たってそろそろ危ないんじゃないかというのはあると思います。ただ、そこは日本らしい緻密な点検・修繕をして長持ちさせて使っていくのだろう、と思います。笹子トンネルの事故以降、全国のトンネルを5年に1度点検するように決めまして、そこでいろいろと課題が出てきたんです。財政的には修繕費用はどうするのか、人的な面ではすべての自治体に技術者がいるわけではないという問題もあります。効率的なインフラ整備をしていくためにはどうすればいいのかを議論しているところです。

 

――ドローンやAIなどの新しい技術をどう活かしていくのかもポイントになりそうですね。

 日本人の真面目さなんでしょうか、たとえばトンネルの打音検査を機械化するとなると、単にコンクリートを叩いたり、音を聞き分けることをロボットにさせるような技術をそのままトレースしたような機械が登場する(笑)。そうではなくて、もっと頭を柔軟にした技術を展開していきたいし、なるべくコストも抑えられる優れた技術を考えていかないと。国交省としてもそれをリードしていかないといけませんね。