未成線、という言葉をご存じか。広い意味では「未完成の鉄道路線」だ。しかし、その中でも「建設計画に従って着工したけれども、工事の完成を待たずに廃線が決まった」という未完成の路線を指す場合がある。未成線は国鉄末期に大量に出現した。国鉄の赤字問題が深刻化して、建設が凍結されたからだ。営業中の赤字ローカル線が廃止され、バス転換、あるいは第三セクターに転換された。その一方で、建設中の路線のうち、完成しても赤字になる路線が未成線になった。

 路盤が整備されたり、トンネルが貫通したり、高架橋ができあがっているけれども、未来永劫、列車は走らない。そして使われなかった構造物が残っている。建設関係者にとっても、鉄道路線開通を待ち望んでいた地域の人々にとっても、無念の象徴のような存在。それが未成線だ。

ゴムタイヤの電動自動車と客車2両で運行している

 そんな未成線の中には、再生され役に立っている路線もある。その1つが山口県岩国市の「とことこトレイン」だ。錦川鉄道錦川清流線の終点、錦町駅と雙津峡温泉(そうづきょう)駅の間、約6kmを結ぶ列車だ。列車といっても線路はないから、ゴムタイヤの電動自動車と客車2両で運行している。ちなみにこの列車は2代目。2005年の愛知万博で場内交通に活躍した乗りものを譲り受けた。

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とことこトレイン

 錦町駅を出て右側の緩い坂を上る。錦川清流線の線路の延長に「とことこトレイン」の駅がある。先頭は機関車役の電動車。その後ろがトロッコ風の客車で開放感たっぷり。発車するとすぐにトンネルに入る。気温がぐんと下がった。真夏は涼しいとして、春と秋は肌寒いかも。ちなみに冬はオフシーズンで運休だ。車両の点検が行われる。

客車は2両