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景色が見えないトンネルでイルミネーションが現れる

 トンネルはかなり長い。もともと鉄道用のトンネルだし、当時のローカル線建設はかなり贅沢で、駅間はなるべく直線的に、トンネルと鉄橋と高架橋で結んでいた。だからトンネルも長い。それはわかるけれど、景色が見えないと飽きてしまうな。そんなタイミングで、イルミネーションが現れる。小石に6色の蛍光塗料を塗り、ブラックライトで照らすアート作品たちだ。

トンネル内は壮大なイルミネーションアートで飽きさせない

 制作には山口芸術短期大学のプロジェクトチームを筆頭に、幼児や小学生などが参加している。海底の世界があったり、宇宙があったり、岩国の歴史や名所もある。景色が見えないトンネルだけど、トンネルだからこそ見られる景色。揺れる車内からだと写真を撮りづらいなと思ったら、「とことこトレイン」はしばらく停車してくれる。トンネル内を散歩しつつ、キラキラとした空間に包まれた。これは楽しい。

 トンネルを出ると高架橋が続く。錦川の上流の町の上。ここも線路になるはずだった道だ。トンネルから空中へ。視界が開ける。斜面にはワサビ畑。錦町の名物はワサビとこんにゃく。それを聞くだけで、水のきれいなところだとわかる。この高架橋は駅も作られる予定だったらしく、プラットホーム用の構造物がある。未成の駅だから「とことこトレイン」は通過。ゆっくり走るけれど急行列車だ。高架区間が終わるとまたトンネルだ。

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おおっ、コウモリが飛んでる

 2つ目のトンネルにはイルミネーションはない。しかし、案内放送によるとコウモリが生息しているという。コウモリを脅かさないためか、トンネルは暗いまま。客車の照明がトンネルを照らし、トンネルの天井を見上げる。黒い小さな点がひとつ、ふたつと現れて、あれはボルトの頭かと思ったら、これがコウモリの群れだった。意外と小さい。飛んでくれないとわからないな。そう思ってトンネル出口を見ると、おおっ、飛んでる。なんだかサファリパークの遊覧列車のようだ。とりあえずコウモリだけだけど。

 トンネルを抜けると桜の並木道。今回は青葉が美しいけれど、満開の時期にもういちど訪れたい。明るい場所に出てほっとして、おいしい空気を胸いっぱいに吸った。高架橋で川を渡ると終点の雙津峡温泉駅だ。待合所を兼ねた東屋のまわりをくるりと走って方向転換。約40分間の旅が終わった。ここから先も鉄道路線の計画があったけれど、工事が行われた区間はここまで。川の向こうには雙津峡温泉の日帰り入浴施設があり、猪料理も食べられる。ちょっとしたアドベンチャー体験であった。