車窓から見える3つの滝
「とことこトレイン」は錦川鉄道が運行している。錦川鉄道の鉄道路線は錦川清流線だ。JR岩徳線の川西駅と錦町駅を結ぶ。ただし、すべての列車はJR岩徳線に乗り入れて岩国駅を発着する。また、山陽新幹線と交差しており、山陽新幹線の新岩国駅と錦川清流線の清流新岩国駅は約400mの近さで、徒歩で乗り換えできる。
錦川清流線の錦町駅までの車窓も素晴らしい。右手に並ぶ錦川は透明度が高く、川底の小石の色が水面に透けて、まさしく錦のような色合いだ。左手には3つの滝があり、錦川鉄道の車窓の名所。水量が少なく、庭園にしつらえた白糸のような滝だ。情緒があるけれど、注意して探さないと見過ごしてしまう。日中の列車は徐行してくれる。
「とことこトレイン」は錦川清流線の続きのような位置関係だ。本来は1つの鉄道路線になるはずだった。岩国駅とJR山口線の日原(にちはら)駅を結ぶルートで、山陽と山陰を結ぶ陰陽連絡ルートとして計画された路線たちの1つだ。このうち、川西から錦町までの区間は国鉄岩日線として開業した。錦町駅から日原駅までは岩日北線とし建設工事に着手する。
豪雨の影響で一部区間が不通になっていたけれども
ところが、途中まで作った段階で国鉄路線の大整理が行われた。岩日線は岩国市、山口県が半分以上を出資し、残りを地元企業が出資する第三セクター「錦川鉄道」が継承した。未完成の岩日北線のうち、路盤ができていた区間は「岩日北線記念公園」として整備され、遊覧列車「とことこトレイン」になった。鉄道開通に期待していた雙津峡温泉は、土日祝と春休み、ゴールデンウィーク、夏休みの期間だけとはいえ、公共交通機関を得た。
未成線の中には、放置され、崩れ、草に覆われ土に還る路線もある。それに比べると、「とことこトレイン」はとても幸せな未成線だ。失望から再生へという縁起もいい。錦川鉄道の景色は日本のローカル線屈指の美しさだけど、錦町駅で折り返したらもったいない。「とことこトレイン」に乗り継いで「岩日線」を楽しんでほしい。
錦川清流線は平成30年7月豪雨の影響で一部区間が不通になっていたけれども、本日、8月27日より全線で運行再開した。「とことこトレイン」はひとあし早く営業を再開していた。残り少ない夏休み。復旧したばかりの錦川清流線で錦町駅へ行こう。「とことこトレイン」で残暑の中の涼を楽しもう。錦町駅では地酒、こんにゃくやワサビを使った特産品、鉄道グッズも購入できる。乗って楽しく応援、買って嬉しく応援、食べておいしく応援しよう。
写真=杉山秀樹/文藝春秋