国土交通省の事務次官に就任した森昌文さんには「タモリ倶楽部」に出演した意外な過去があった! 技官として建設省に入省後、一貫して“道路畑”を歩んできた森次官の「道路愛」、意外な素顔をお伺いしました。(全2回の2回目/#1より続く)
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全国に赴任して、様々な「災害」を体験してきました
――次官の経歴を拝見すると、建設省入省後ずっと道路をご専門にされているのですね。
森 道路だけというわけじゃないんですが、担当する期間が結構が長かったですね。ただ、道路を中心としつつもいろいろな分野を担当してきておりまして。私は技官、技術系の人間なので、全国各地の現場に出ては東京に戻って、というのを繰り返してきたんです。ですから、災害対策という点ではいろいろと身をもって体験してきています。
――例えばどんなところに赴任されていたのですか。
森 豪雪地帯では新潟県の越後湯沢にも行きましたね。今の越後湯沢ってスキーリゾートで結構オシャレなところになっていますが、私が赴任していたときはまだまだの頃で、昔ながらのひなびた温泉街だったんです。まさに「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」。川端康成の世界みたいなところなのですが、毎年10~20mくらい雪が積もるんです。そこで、除雪をどうするかといった問題に取り組みました。他にも、川は全国にありますから大雨による氾濫には本当にたくさん接してきましたね。
かつてはETCの導入や普及に取り組んでいたんです
――先ほど(インタビュー前編)国交省が防災にどう取り組むかをお伺いしましたが、その経験が現在の知見に生きているというわけですね。他では建設省土木研究所ITS研究室長というご経歴も。
森 これは私の数少ない自慢ポイントなんですが(笑)、自動料金収受システム、ETCの導入や普及に取り組んでいたんです。ETCの仕組み自体は三菱重工さんの特許なんですが、あれを全国に配備したりそれをみなさんに買っていただいたりという、そういう取り組みをしました。ETCを導入するときに考えていたのは、高速道路の料金所の渋滞をなくすこと、そして首都高利用料の不公平感をなくすことでした。当時は走る距離に関係なく700円均一でしたが、首都高の路線網がどんどん伸びていくと700円均一じゃ不公平になりますよね。そこで対距離の料金にしていくためにはETCのようなものがあったらいいよね、と。実際にはETCの導入って世界的に見ればそれほど早くはないんですが、うまく日本の社会の仕組みになじませるように考えていました。
――今やほとんどの車にETCは搭載されていますからね。それを牽引したのが森さんだったとは知りませんでした。
森 推進チームの一員ということで牽引というほどではないんですけど。高速道路を利用されている方でいえば、90%以上の搭載率になりました。制度設計としてはうまくいったのかなと感じています。