「とても臭くて白濁していたそうです」
9月23日には、汚染水がマンホールから噴き出すという、信じ難い出来事も起こった。仲卸業者のひとりで、「築地女将さん会」会長の山口タイさんが語る。
「仲卸業者が移転の準備のために、豊洲に行っていた時、偶然、見つけたんです。水は、とても臭くて白濁していたそうです。たまたま彼らが発見したから明るみに出ましたが、そうでなければ、都はこれも隠蔽したんじゃないでしょうか」
東京都は、地下水の上昇を抑えるために地下水管理システムを導入。地下水の水位が上昇した際には、速やかに浄化して、外に排出できると説明した。だが、そのシステムが機能せず、浄化前の地下水が、そのままマンホールから噴き出したのである。
地下水は言うまでもなく、汚染されている。
東京都は、この件に関して「地下水を汲み上げて排水施設に送るための送水管の空気弁に付着物が挟まったことが原因」として、「過去に同様のケースはなく、今後は再発防止に務める」との見解を示した。だが、この説明では仲卸業者の不安は少しも解消されない。
マグロの身にカビが付着したら……
湿気とカビは、より深刻な問題である。
「とにかく豊洲市場は湿気がひどいんです。地下水が水蒸気になって上がってくるのに、建物が密閉型で窓ひとつない。温度を冷暖房で常に25度になるよう設定しているので、特に夏場は、ダクトを通じて室内にも水滴が生じる。開店すれば、店内に冷凍庫やダンベといった冷蔵機器を入れ、冷凍食品を扱うわけだし、水も流す。益々、湿気が出るはずです。
開場前の今現在で、空調を24時間フル稼働にしても、湿度が70パーセント。高い時は90パーセントを超える。だから、ものすごくカビが出るんですよ。カビは生ものに付着して繁殖する。一番、心配なのはマグロです。マグロの身にカビが付着したら、3、4日後に発生する。豊洲で売る時は目に見えなくても、小売店に渡ってからカビが出ることも……」(仲卸業者・男性Bさん)
都も、ここまでの湿気とカビの発生は想定外だったのだろう。開場を目前にして、至るところに、大型の除湿機を断りもなく設置した。仲卸業者の女性が、憤慨しつつ語る。
「最近になって、突然、巨大な除湿機が無造作に通路にボンボン置かれたんです。カビ対策なんでしょうね。でも、こんなものがあったら、危なくてターレを走らせられない」
湿気を除去する根本的な手段がなく、この巨大な除湿機を都は置いたのだろうか。
豊洲では「買い回し」ができない
市場機能を無視した構造上のミスをあげる声も数多く耳にした。
「豊洲は築地のようにコンパクトにまとまっていない。だだっ広いばかりで、まったく動線を考えて作られていないんです。これでは、仲卸棟で魚を買って、青果棟で野菜も買う、という『買い回し』ができません。それに、鮮魚は新鮮さが命。時間をかけないように機能的に運ばなくてはならないのに、築地の何倍も時間がかかる」(仲卸業者・男性Aさん)
卸、仲卸、青果棟と、これまでは三つの機能がワンフロアに集約されていた。階段やエレベーターとは無縁だった。
だが、豊洲は3か所に建物が分かれており、しかも、それぞれが幹線道路によって分断されている。また、仲卸棟の積込場や店舗は1階から4階まである。
「それなのに、エレベーターは6基のみ。4階まで買いに来てもらえるのか。本来、市場は築地のような平屋が理想なんです」(仲卸業者・女性Aさん)