〈私は小池百合子さんとカイロで、同居しておりました者です。カイロ大学を卒業、しかも首席で、という肩書を掲げて小池さんは今日の栄光を勝ち得ましたが、彼女は実際にはカイロ大学を卒業していません〉

 今年1月、ノンフィクション作家の石井妙子氏宛てに一通の手紙が届いた。差出人は中川恵子さん(仮名)。小池百合子都知事がエジプトの首都カイロに留学していた時期に同居していた女性である。

最初に2人で住んだアパート ©文藝春秋

 これまで中川さんはマスコミの取材を受けたことは一度もなく、40年以上も沈黙を守り抜いてきた。だが、中川さんは石井氏が「文藝春秋」2018年1月号に寄稿した「女たちが見た小池百合子『失敗の本質』」を読み、真実を話すことを決意したという。

ADVERTISEMENT

 中川さんからの手紙にははっきりと、「彼女は実際にはカイロ大学を卒業していません」と書かれていた。

 小池氏がこれまで自著で記してきたカイロ時代の経歴は、主に、次のようなものだ。

「1971年秋にカイロ・アメリカン大学に入学してアラビア語を学ぶ。翌1972年10月、カイロ大学文学部社会学科に入学し、1976年10月、日本人女性として初めて、しかも首席で卒業」(『振り袖、ピラミッドを登る』1982年、講談社など)

“初めて”卒業したと語った新聞(サンケイ新聞 1976年10月22日)
小池百合子都知事 ©文藝春秋

 しかし小池氏の説明には矛盾も多い。例えば上記の『振り袖、ピラミッドを登る』には、「(カイロ大学を)一年目は落第し」と書いている。もしも1年、留年したのであれば、卒業は1977年でなければ、話が合わないはずだが、彼女は「1976年に卒業」とはっきり書いている。またアラビア語は非常に難解な言語で知られ、日本人で最初にカイロ大学を卒業した小笠原良治・大東文化大学名誉教授でさえ卒業までに7年もかかっている。4年で、しかも日本人の首席卒業はほとんど奇跡に近いという。

 それゆえ、これまでもたびたび、この「カイロ大学首席卒業」については、疑惑の目が向けられてきた。しかしそのたびに小池氏は、「卒業証書もある」と語ってきた。そして選挙公報にも「カイロ大学卒」と記している。

カイロ大学 ©文藝春秋

 真実は一体、どこにあるのか。

 石井氏は中川さんへのインタビューを重ね、彼女が保管していた膨大な量の手紙や手帖を検証し、それと同時に、当時の小池氏を知る関係者らへの取材を数カ月にもわたり続けてきた。カイロでは彼女たちが当時住んでいたマンションも訪ねた。

 知られざる小池氏のカイロ時代の姿と「カイロ大学首席卒業」の謎を解き明かした、全26ページにわたる石井氏執筆の「小池百合子『虚飾の履歴書』」は、「文藝春秋」7月号に掲載される。

文藝春秋 2018年 07 月号 [雑誌]

文藝春秋
2018年6月9日 発売

購入する