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揺れる家族

81歳の父親が出会い系アプリに300万円課金、さらなる悪夢が…困惑する息子が気づいた「ある異変」

81歳の父親が出会い系アプリに300万円課金、さらなる悪夢が…困惑する息子が気づいた「ある異変」

老いと父親 #2

2024/01/12

genre : ライフ, 社会

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 そう言っても、恥ずかしがる様子すら見られないことに、だんだん腹が立ってくる。ネット上で明細を1年分遡ってみると、出会い系アプリに費やした額はざっと300万。「もったいないと思わないの?」と問いただすと、信じられない台詞が飛び出した。

「そんなことに300万円使うんだったら、そのカネ自分にくれればいいのにと思っているんだろう?」

 これには完全にキレた。

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「あんたの金だからどう使おうが勝手だが、もとは家を売ったお金で、その家を建てられたのはオカンも働いていたからだろう? オカンの墓の前で土下座して詫びろや!」

 思わず襟首掴んで怒鳴りつけ、姉に止められる始末である。50過ぎて我ながら情けない……。

父親に起きていた異変

 とにかく、アプリはすべて削除。一緒に登録したと思われる怪しいLINEアカウントも、すべてブロックのうえトークを削除。あと、不正利用でない以上は、不足分を払わねばならない。マンションの部屋のタンス預金から必要な額を持ち出し、借りたキャッシュカードで入金。しかし、またアプリをダウンロードされたらお手上げだ。

 そこで、施設へ訪問診療に来ている精神科医に相談したところ、病院を紹介してもらい、CTスキャンや心理テストを受けることになった。結果は、「前頭側頭型認知症」の疑い。

 このタイプの認知症は、脱抑制といって食欲・性欲などを抑制できない(そういえば、70代後半になってから10キロ以上も太った)、甘いものばかり欲しがる(毎日のようにアイスを食べているらしい)、罪悪感や恥の意識を感じにくい(今の状態がまさにそれ)、といった特徴があるとのこと。

 病気だから仕方がないのか……こうした症状をある程度抑える薬はあるというが、きちんと服薬管理をできないといけないほか、服用するとボーッとして転倒リスクなどがあるため、認知症のひとり暮らしでは処方しづらいそう。

 というわけで、一度は自宅マンションに戻ったものの、本格的に介護施設へ移すべく相談を始めているところ、再びのトラブルに見舞われることになる。