日本を代表する作家たちが、大学の教室で授業をしている様子を、ネット上で無料で見ることができるサービスが始まり、本好きを喜ばせている。

教壇に立った小川洋子さん(左)と葉室麟さん ©文藝春秋

 いま公開されているのは小川洋子氏と葉室麟氏の授業だが、小川氏の講座名は「小説の生まれる場所」というもの。「今日、作家本人が出てきて自分の作品について何か語れることがあるとすれば、それは小説の一行目が書かれる前に何が起こったかです。小説が生まれる以前の場所、そこにひととき考えを巡らせることによって、もう一歩、文学に深く踏み込むきっかけを作る役目を果たせたらいいなと願っています」と語り始め、集まった愛読者たちを一挙に自身の世界に引きずり込んだ。

 もうひとりの葉室氏は「歴史小説を書いて考えること」というテーマで、司馬遼太郎氏やドナルド・キーン氏の著作に触れながら、先達の歴史観や時代小説について思うこと、そして小説に込める思いを諄々と説き、葉室世界に心酔する受講生を満足させた。

著名な作家が続々と登場

 このイベントを仕掛けたのは公益財団法人・日本文学振興会。同会は芥川賞、直木賞を主催・運営することで知られているが、昨年7月、文芸の振興を目的に「人生に、文学を」プロジェクトをスタートさせた。その一環として始まったのが今回の<「人生に、文学を」オープン講座>で、著名な作家に大学の教室に出向いてもらい、ネットで募った数十名の受講者を相手に授業を行ってもらうというもの。

「大学のこぢんまりとした教室で、親密な空気のもと、講師と受講者は会話をかわしながら授業は展開していきます。一方的な講演ではなく、作家と愛読者がやり取りをしながら理解を深めていくさまはとても興味深いものです。この様子を2台のカメラで撮影しました。受講できなかった多くの読者にも是非この授業を参観してもらいたくて、この動画を公開することにしました」(日本文学振興会)

 昨年11月には東京大学・本郷キャンパスで西村賢太氏と村山由佳氏の授業が行われた。また今年の5月20日には上智大学で浅田次郎氏と中村文則氏の授業が、6月10日には神戸女学院大学で内田樹氏と高橋源一郎氏の授業が行われる予定で、授業は順次ネットで公開される。

 受講者の募集は「人生に、文学を。」公式サイトで行われる。