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フランスの画家デュフィが描く「暮らしの美」が日本人の心を打つのはなぜか

アートな土曜日

2019/10/12
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日本文化とも呼応する「暮らしの中の美」

 人生の愉しみ、生きる歓びをうたい上げる画風なのだから、当然ながら描く題材は、生活に密着したものとなった。デュフィはさらに、生活の中にあるものをアートにしていくことにも積極的だった。自身の才能をキャンバス上に展開するだけではなく、本の挿絵、雑誌の表紙、舞台美術、陶器デザインなども広く手がけた。

 人気を博したのはテキスタイルデザインだった。リヨンの絹織物業者と共同で、大胆な色柄の布地を発売して、上流階級の女性のあいだに大いに流行した。

『イヴニング・コート《ペルシア》』ドレス・デザイン原案 ポール・ポワレ(1911年)制作 モンジ・ギバン 2007年 絹 デュフィ・ビアンキーニ蔵
『オルフェウスの行列』 1913年 絹織物 デュフィ・ビアンキーニ蔵

 今展ではまず、「これぞデュフィ」と思わせる幸福感あふれる絵画作品が観られる。次いで、テキスタイルデザインの原画や下絵、オリジナルのテキスタイルなどをまとめて見せてくれる。

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『幾何学模様の構図〔デザイン原画〕』 1919-28年頃 グワッシュ/紙  デュフィ・ビアンキーニ蔵

 確信を持って装飾に満ちた作品や生活を彩るモノを生み出したデュフィの「美」への向き合い方は、美がいつも生活とともにあった日本の文化と呼応するところが大きい。それゆえデュフィは日本で高い人気を誇っているのだろう。会場でデュフィ流の「暮らしの美」を感得したい。

フランスの画家デュフィが描く「暮らしの美」が日本人の心を打つのはなぜか

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