JR東日本のグループ会社「JR東日本環境アクセス」は、真の「地球環境企業」をめざして多彩な事業に取り組んでいる。同社の中核を担っているのは、駅や駅ビルの清潔感を保つ「清掃のプロ」たちだが、それ以外にも、さまざまなキャリアを持つスタッフが働いている。そしてそこには、戦力外通告を受けた、元プロ野球選手の姿もあった。
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JR東日本環境アクセスの総務部で働く石川雅実さん(38歳)は、「元読売ジャイアンツの投手」という輝かしい経歴の持ち主だ。しかも、松坂大輔と同学年の「松坂世代」と聞けば、さぞ華々しい野球人生だったのだろうと想像したくなる。しかし、石川さん自身は「プロ野球選手時代は、挫折と自己否定の毎日だった」という。どのようなつらい経験を経て、そしてなぜJR東日本環境アクセスで働くようになったのか。そこには強い「思い」があった。
石川さんは、高校を卒業後、スカウトを受けてJR東日本に入社した。硬式野球部に入った石川さんは、そこで徐々に頭角をあらわし、入社3年目のドラフト4巡目で、読売ジャイアンツに入団を果たした。
しかし、憧れのプロ野球界は、そう甘くはなかった。期待のルーキーとして入団したが、怪我に苦しみ、思うように結果が出せない日々が続く。結局、2年で戦力外通告を受けた石川さん。2軍コーチのすすめもあり、「武者修行」のつもりで台湾のプロ野球チームに入団したが、そこで完全に肩を壊してしまい、選手生命を終えることになった。「それまで1日も欠かしたことのなかった練習を、明日からはもうしなくていいと言われ、これから先何をしたらいいか、まるで分かりませんでした」。石川さんは、そう当時をふり返る。
帰国後、石川さんは福岡で自営業をしていたお兄さんを頼って九州へ引っ越し、心機一転を図る。そして、熊本で青果店の店長を務めるなど、「野球選手」とは無縁の日々を送っていた。
やりがいのある仕事に出会い、結婚して子どもにも恵まれるなど、充実した毎日を過ごしていた石川さんだったが、次第に「自分には何かやり残したことがあるのではないか」と考えることが多くなった。そんな時、石川さんの人生を再び変える“事件”が起こる。2016年の熊本地震だった。