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レジの行列で感染拡大も……なぜ日本では「ソーシャル・ディスタンス」を徹底できないのか?

これは“一般市民のせい”ではない!

2020/04/16
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確かに「人出」は減っているが……

 ドコモ・インサイトマーケティングが提供している各地の推計データによると、4月11日(土)午後8時台の東京・新宿歌舞伎町の滞在人口は前年同週の同じ曜日と比べ72%減。同じくJR渋谷駅のスクランブル交差点を含むエリアは86%減、JR大阪駅周辺は93%も減ったとのこと。「人との接触を8割減らす」という政府の目標からすると、悪くない数字と言えるかもしれません(日本経済新聞「休日要請初日の人出 歌舞伎町72%減、大阪駅周辺93%減」2020年4月12日更新)。

4月12日、秋葉原駅近くの横断歩道で。「ソーシャル・ディスタンス」を意識している人はほとんどいなかった(筆者撮影)

 しかし、「人出」は減ったかもしれませんが、「人と距離を取る」という点が、まったくできていないと感じました。これでは、新たなクラスターの発生を止めることは難しいかもしれません。

飛沫感染を防ぐには「距離を取る」がもっとも効果的

 なぜ、感染を防ぐのにソーシャル・ディスタンスが重要なのでしょうか。それは言うまでもなく、せきやくしゃみなどによる飛沫感染を防ぐには、感染者と距離を取るのがもっとも効果的とされているからです。一般に、その距離は2メートルが推奨されています。それだけ空ければ、飛沫の多くが重力によって落ちるので、感染リスクが大幅に下がるからです。

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 しかし、最近の研究や報道では、2メートルでも足りないという指摘があります。たとえば、感染していることを知らずにランニングすると、息が荒いために空気中に多量のウイルスを排出するだけでなく、飛沫が後ろに向かって勢いよく広がるため、2メートル以上空けないと感染する恐れがあるというのです(飯塚真紀子「2メートルの『ソーシャル・ディスタンス』が十分ではないこれだけの理由 ランニングは横並びで!」Yahoo! Japanニュース 2020年4月13日)。

前後の感覚を空けながらスーパーマーケットに並ぶ人たち(スペイン) ©AFLO

 いずれにせよ、「人との距離を十分に意識して取る」という行動ができなければ、せっかく人出が80%以上減ったとしても、通勤中や買い物、食事などの間に感染して、知人や家族に感染を広げてしまうかもしれません。「平日、通勤している人は無理だ」という悲鳴も聞こえてきそうです。でも、意識するとしないとでは、やはり違うのではないでしょうか。