多くの土地オーナーから「土地活用のパートナー」として選ばれ続けている三井ホーム。土地活用のプロフェッショナルである同社営業担当者へのインタビューを通じ、三井ホームがパートナーとして選ばれる理由を探る本企画。今回は、東京都港区にある築40年超のビルを、相続を見据えて2棟の賃貸住宅に建て替えた事例を紹介する。本件を担当した施設事業本部コンサルティング第一営業部営業グループ長の石沢賢治氏に話を聞いた。
最初のプラン提案までに約半年を費やす
東京都港区にある約170㎡の敷地。山手線の内側のエリアに位置し、3駅が徒歩圏内という好立地に、自宅および貸事務所や賃貸住宅が入る築40年超のビルがあった。
90歳を超えるオーナーさまはすでに高齢者施設に入居し、相続人となる60代の2人のお子さまは、それぞれ都内のご自宅で暮らしていました。ビルの付近では再開発も始まり、今後ますます人の流れが増えることが予想されている中、オーナーさま一家は、近い将来必ず訪れるであろう相続への不安を抱えていました。
取引銀行の試算によると、そのビルの相続税額は相当な金額になるとのこと。遺産分割以外にも相続税対策が必要と思われました。オーナーさま一家は、土地活用の必要性を認識し、取引銀行を通じて複数の不動産業者に相談したようです。当社が銀行から連絡をもらった時は、すでに他社は具体的なプランを提案する段階にありました。
私はいつも最初のプランをご提案するまでかなり時間をかけます。とにかくお客さまとコミュニケーションを図り、心配ごとや心に秘めた思い、お客さま自身が気づいていない真のニーズなどを探ります。この時も最初のプラン提案までに半年ほど費やしましたね。途中でお客さまのほうがしびれを切らして、『もうそろそろ何かプラン、出てきませんか?』なんて言われました(笑)。
他社が競って土地活用のプランを提案する中、石沢氏はオーナーさまご本人や相続人であるお子さま(姉弟)が、どういう思いを持っているか丁寧にヒアリングしていった。それを通じ、「代々受け継いだ土地なので残したい」というのがオーナーさま一家に共通する願いである一方、姉と弟の間には少しだけ温度差があることを感じ取った。
土地活用をするならある程度、収益性も追求したいという気持ちが弟さまは強かったと思います。そこで最初のプランでは、敷地を一部売却するプランや、賃貸住宅を1棟のみ建築し、残りのスペースはコインパーキングにする案など、いくつかの案を提案しました。
他社は賃貸マンション1棟建ての提案がほとんどだったので、当社の提案は、他社とは一線を画す柔軟で新鮮なものだったようです。具体的なプランを基に再度コンサルティングを行う中で、姉弟どちらにも売却の意思がないことを再確認し、賃貸住宅を建てて相続対策を講じるということに落ち着きました。
他社のプランについても意見を求められました。1棟建ての物件をお2人が共有状態で保有し続けると、いずれ発生する次の相続が非常に複雑になり、相続トラブルに発展する可能性が高くなります。実際にそれで苦労しているご家族の話などをすると、評価額をきっちり半々に分ける2棟建ての賃貸住宅のプランに決まりました。
当社の実物を見れば必ず理解してもらえる、と信じていた
具体的な物件タイプは、立地の利便性や再開発エリアであることを鑑み、単身者向けのワンルームに。1棟に5戸、計10戸確保することで収益性も追求した。
どちらの棟も1階部分の半分は駐車場にしました。これは入居者用ではなく、オーナーさまが駐車するためのものです。弟さまは近くに仕事場があり、お姉さまも仕事でたびたびこの辺りに来るということで、お2人の駐車スペースが必要でした。しかしこのエリアは駐車料金が高いので、敷地内に駐車できるスペースを確保してほしいというお2人のリクエストを反映したものです。これで新たに月極め駐車場を借りる必要はなくなりました。また、各部屋の賃料設定を均等にし、お2人の賃料収入がほぼ同額になるように調整しました。
2棟10戸というプランに決まったのですが、構造でお2人の意見が分かれました。実は目黒区のお姉さまのお住まいは、三井ホームの物件です。ですから、そのデザイン性の高さや木造住宅の快適さなどは、十分ご理解いただいていました。一方、弟さまは重量鉄骨のマンションにお住まいで、木造住宅にあまりいい印象をお持ちでなかったのです。
当初はA棟を木造、B棟を鉄骨という案も検討しました。しかし同じ敷地内で、全く趣きの違う建物というのはあまり美しくありません。当然、お姉さまは統一したいという意思が強くありました。そこで当社の施工実例をお2人に実際に見に来ていただくことにしたのです。実物を見ていただきさえすれば、当社の木造住宅がいかに優れているか、必ずご理解いただける――そう信じていました。