日本の政治家は、女性についての軽口をたたく。本人は「ざっくばらん」を演出しているつもりでも、偏見や侮辱を含んだものが多い。それを「放言」で片付ける悪癖が、女性差別を悪化させてきたと、ポンス氏は言う。日本の安倍晋三前首相が「女性が輝く社会づくり」を掲げて7年たつが、世界経済フォーラムの男女平等ランキングで日本はいまだに153カ国中、121位に低迷していることは、その表れだと主張した。
2月12日付仏紙フィガロは、日本の長老政治への驚きを「東京五輪 83歳の森氏が去り、84歳の川淵氏が来る」という見出しに込めた。元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏が後継者に浮上した時の日本メディアの転電だ。
フランスのマクロン大統領は43歳、欧州政界で最古参のメルケル独首相でも66歳だから、80代が続々出てくる日本政治は、想像を絶する異次元世界と映る。森氏は「昔の日本の首相」というだけで、国際的な知名度に乏しいから、「代わりができる人がいない」という組織委からの発言も理解不可能である。
バイデンがこだわる「女性初」
ただ、欧州メディアの高説はよいとして、日欧の実生活でそれほど女性の扱いが違うのか、というと首をかしげたくなる。
リーダーシップへの「男女平等」意識の浸透度を示す「レイキャビク指数」という統計がある。2019年の調査で、日本は先進7カ国(G7)中、ドイツやイタリアを上回って5位だった。「女性が企業トップになるのはよいこと」と考える人の割合は日本では33%。ドイツと同じだった。女性のメルケル首相が16年間君臨するドイツでも、男性優位の意識はしっかり残る。
フランスは、政治や企業への女性クオータ制(一定の比率で起用する制度)をいち早く取り入れた。そんな国でも、昨年の女性調査で「セクハラを受けた経験がある」と答えた人は81%にのぼった。現在の内相は、なんと暴行とセクハラで女性に告発されている。
女性差別が根深く残るからこそ、欧州の政治家は「男女平等」の原則を繰り返す。米国ではさらに進んで、バイデン政権が「女性初」「黒人初」の人事にことさらこだわる。