ブラック・ライブズ・マターの脈絡でも反論は困難
ここ100年の英王室はスキャンダルの連続だったといっても過言ではない。そもそもエリザベス女王が戴冠したのも、気さくで国民にも人気の高かった伯父のエドワード8世がバツ2の米国女性と「世紀の恋」に落ちて王位を返上し、弟に当たるジョージ6世、すなわちエリザベス女王の父親に王位を譲ったからだ。
チャールズ皇太子とダイアナ妃のダブル不倫、離婚とダイアナ妃の事故死はいうまでもない。最近ではチャールズ皇太子の弟、アンドリュー王子が米富豪エプスタイン氏の児童買春ネットワークの顧客だったのではないかとする疑惑に巻き込まれ、王室のメンバーから外された。
だが、今回の暴露はこれまでと次元が全く変わっている。英国ではそもそも人種差別が社会問題として俎上に載ることは少ない。むしろ階級問題の方が表に出やすい。半世紀前まで黒人と白人のトイレを別にするなど過酷な人種差別をしてきた米国のようなトラウマもないからだろう。
その米国で、しかもリベラル派の黒人司会者の前で人種差別発言を暴露し、しかもその発言が、長男が王室から外されるという人種差別行動に結びついたと主張することは、英王室の問題を、米国のブラック・ライブズ・マター(BLM、黒人の命も大切だ)運動の文脈に位置づけることを意味する。
メーガン妃の行動、発言に対して、米国と違って英国では反発も大きい。それにあわせるかのようにメーガン妃が元側近らをいじめていたとの報道も出た。だが、米国発の国際世論の力は大きい。エリザベス女王が速やかにコメントを発表し「真剣に受け止め家族で対処する」としたのは、BLMの脈絡から正面切っての反論が難しかったことが影響した可能性もある。
小室圭さんの“渡米物語”はアメリカでウケる?
英国では賛否の分かれる問題が、米国発で発信されることで、国際世論を味方につける。この展開は、秋篠宮家の長女、眞子さまとの結婚を目指しながらも国内世論の反発に阻まれている小室圭さんに大きな示唆を与えずにはいないだろう。
眞子さまと小室さんの結婚が延期されたのは小室さんの母親の元交際相手への借金問題が大きな要因とみられ、国内ではいっこうにそれを説明しようとしない小室さんへの反発も大きい。
だが、シングルマザーの庶民の子がプリンセスと恋に落ち、それに対して親や世論が邪魔をして結婚が成就できない、との筋書きで米国から訴えたらどうなるだろうか。小室さんは米国で弁護士資格を得るべく勉学に励んでおり、移民国家ではそれも好感を持たれるポイントになる。
メーガン妃の発言は、本人も意図しない余波を生むかもしれない。