もちろん、英語は大好きだし、英語で読み書きすることも好き、歌も音楽も大好きだけど、それは自分を成り立たせる言語ではなく、どこか着脱可能なものだと。そうすると、私は、どこであろうと、どんな言葉であろうと、興味を持ってスッと入ったときに、そこが歓迎してくれるなら気持ちよくなれるんです。
サンフランシスコに移住、高校の同級生の半分以上がアジア系
岡村 じゃあ、その入口は何だったんですか? 日本への入口は。
キャンベル それはやっぱり大学生になってから。ヨーロッパでの生活が終わってアメリカに戻ったとき、ニューヨークではなくサンフランシスコに移ったんです。10代、高校生の頃ですね。すると、私が通ってた高校の生徒は半分以上がアジア系。それで日本を初めとするアジアの国々になんとなく興味を持つようになって。
で、大学に入り、たまたま美術史の授業を受けてみたら、「日本語がわからないと日本の美術がわからないよ」と先生に言われて。嘘だろうと思ったんです。音楽もそうだけど、言葉がわからなくても、予備知識がなくても、芸術は誰でも楽しめるもの。でも、先生がすごく言い募るんです。「いや、言葉がわからないと、この『洛中洛外図』の中で何が起きているかがわからない。早く日本語を覚えろ」って。
18歳、19歳のときにそう言われたんです。それで、そのまま日本語の授業に出始めたら、これは面白いと。それで、三島由紀夫の『仮面の告白』を読んだのが20歳ぐらいの頃だったんです。
岡村 日本語で?
キャンベル 辞書を引きながら。
岡村 すごい。新しいお父さんとはすぐ仲良くなり、フランスへ行けばフランスに馴染む。そもそもの適応能力が高いんでしょうね。