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「ハーバード卒文学者」から「お茶の間の人気者」へ…ロバート キャンベルは青年時代、なぜ日本に惹かれたのか

岡村靖幸 幸福への道

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 日本文学者、テレビコメンテーター、早稲田大学特命教授と、様々な肩書きを持つロバート キャンベルさん。2018年にはカミングアウトをし、同性のパートナーと米国で結婚していたことを明かした。

 キャンベルさんは英語のほか、アイルランド語が飛び交うニューヨークのブロンクスに生まれ、実父と生き別れた後、母がユダヤ人男性と再婚。10代の頃には家族でフランスに移住するなど、マルチリンガルな環境で育ったという。

 そんなキャンベルさんはなぜ日本に興味を持ったのか。岡村ちゃんがそのルーツを探る。

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ロバート・キャンベルさん、岡村靖幸さん

アメリカを「より所」と感じたことがなかった

岡村 キャンベルさんは江戸時代の文学や漢詩などを読んで日本文化を深く研究していらっしゃる。僕が知りたいのは、どんなきっかけで日本に興味を持ったのかと。

キャンベル いやいやいやいや、どこかで聞いたことがある質問。

岡村 ははは(笑)。でもね、日本人がギブアップするようなものに、よくキャンベル青年はコンセントレートしていったなと思って。

キャンベル 先ほども言ったように、いろんなところに粉をかけまくっていると何かが起こるじゃないですか。数撃てば当たるんです。私、少年時代はライフルもやっていて、上手かったんです。NRA(全米ライフル協会)という今一番いけない、アメリカ社会を壊している協会にも入ってたし(笑)。

岡村 マイケル・ムーアが突撃した、かの有名な(笑)。

キャンベル 私がやっていたのは競技としてのライフル。もちろん標的は生き物じゃない。でも、そうやって、いろんなことをやって、一つまた一つと削ぎ落としていった結果、日本が残ったというか。

週刊文春WOMAN vol.10(2021年 夏号)

岡村 なぜ?

キャンベル 決定的瞬間はないんです。だから私はその質問は避けたいという(笑)。ただ、最初の話に戻すと、当たり前じゃなかったんです、自分の英語が。祖父母たちはアイルランドの独立戦争世代で、イギリスの植民地だった頃、難を逃れてアメリカにやって来た人たちなんです。だから、アイルランドにいる人たち以上にアイルランドで。

 でも私はその孫世代。そこまでアイルランドではないわけです。とはいえ、自分のより所がアメリカかといえばそうとは限らない。自分が喋ってる言葉や持っている価値観、遊び方、笑いのツボ、それが当たり前で空気みたいなものだということをあまり感じたことがないんです。