幕末動乱期の京都の治安維持を任務として結成された新選組。新選組隊服である「だんだら羽織」は、赤穂義士の討ち入り装束を真似たものだ。監察・山崎蒸は特別な想いでその隊服を見ていた。監察とは、隊士の身辺調査や情報探索を任務としていた。

 
 山崎には、他人には言えない秘密の素姓があった。曾祖父が赤穂浪士の一人だったが、討ち入り前に命が惜しくなり、逃走していたのだ。折しも内偵していた尊皇攘夷の志士たちのなかに、赤穂浪士の末裔を鼻にかけた旧知の剣士がいることを山崎は知る……。

 司馬遼太郎原作『新選組血風録』のコミカライズ版第3巻から、山崎蒸の秘められた素姓を描いた「池田屋異聞」をご紹介する。

剣に品がない

 新選組監察の山崎蒸はかつて“鍼屋の又助”と呼ばれ、道場では相手が倒れても撃つのをやめず、「剣に品がない」と同門で嫌われていた。しかし、山崎が嫌われていたのは、剣技だけではなかった……。

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「目録を授けるには姓が必要」と道場主に言われ、山崎は父に家系について尋ねる。しかし、「わが家は数奇の家である」と言うだけで、詳しいことは教えてくれなかった……。

 
 

 道場に巨大タコを彷彿とさせる大高忠兵衛がやってきた。「それがしは赤穂義士の曾孫である」

 
 

 赤穂義士の曾孫であることを鼻にかけた大高忠兵衛は道場の師範代に迎えられ、又助(山崎)が密かに懸想していた道場主の娘とも出来ていた……。

 

 山崎は新選組に入隊する。父が亡くなった時、山崎は兄から曾祖父が赤穂藩士でありながら同志を裏切り、逃亡したことを教えられる。山崎はその事実に泣いた……。