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うさぎのケージに監禁し始める

 その日、夫婦は玲空斗君たち子供を実家である小百合の家に預け、外出した。預けられた玲空斗君は、パーティーの最中に朋美の弟のピザを食べてしまった。夫婦がもどってきてから、小百合がその一件を報告したところ、朋美が激怒して忍に命じた。

「この子、また食べ物取ったんだって! 怒りなよ!」

 忍は朋美の言いなりになって、玄関で玲空斗君の首をつかみ宙に持ち上げて顔を近づけると、「おめえ、何やってんだ!」と怒鳴りつけた。玲空斗君は怯えて泣き、「さい! さい!」(ごめんなさいの意)と必死に謝った。

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 あまりに玲空斗君が怖がるので、小百合が見るに見かねて朋美に「やめさせな!」と言った。朋美が仕方なしに「もうやめてあげて」と制して、ようやく収まった。これが、2人の虐待が目撃された唯一の場面である。だが、ケージへの監禁の経緯も含め、おそらく足立区のアパートでは、この場面のように朋美が激怒して忍に折檻を命じることがくり返されていたと思われる。

※写真はイメージです ©iStock.com

 この晩、夫婦は子供たちをつれてアパートに帰ったが、そこでも玲空斗君は別の子供のお菓子を取って食べてしまう。これで夫婦は、「もうずっと閉じ込めなきゃダメだ」と考えるようになり、朝から晩まで毎日ケージに入れておくことにしたのである。

 ケージの中で身動きさえとれない日々を過ごすうちに、玲空斗君は日に日に衰弱していった。初めの頃はケージを揺さぶったり、「わー」と大声を上げたりしていたが、騒ぐ回数は徐々に減っていった。やがて言葉すら発しなくなって、ケージの中から家族を恨めしそうにじっと見つめるだけになった。

 朋美は、ケージの玲空斗君の眼差しが気持ち悪くてならなかった。ある日、忍を呼んで「玲空斗と目が合うのが嫌だから」と、ケージを何かで覆うように命じた。彼は、二つ返事でケージを段ボールで囲ってしまった。こうして玲空斗君は、ケージの外を見ることすらできなくなった。

 夫婦は、こうしたことの残虐性を認識しつつも、「しょうがないこと」と考えていた。2人が有紗の家に遊びに来た時、有紗に向かって忍が平然とした顔でこう言ったことがあった。

「夜中に玲空斗が、ご飯の残り物とか冷蔵庫の中身とかを勝手に食べちゃうんだよね。だから、ケージに入れてるんだ」