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 ですから、私はこれらの言語を自分の言語として考えています。私はそれらを、何かを学んだり、遊んだりするために通らなければならない道だと思っていて、どこかの国の「外国語」とは思っていません。

自分のための星座を作ろう

 私は学科分けに意味があると思ったことは一度もありません。私の頭の中には、文系も理系もないのです。高校に行っておらず、それぞれの学科として授業を受けた経験があまりないからかもしれません(笑)。

 学科分けとは、空にたくさんの星があって、誰かがその星に名前をつけたり、さらには「星座」として占いに使ったりするのと同じです。星座の一つひとつの星には実体があり、実際は遠く離れています。それらの星をつなげて星座と呼んでも、これは幻想に過ぎないのです。

 でも、皆が12星座の話をするから、だんだんと実質的なものに感じられるようになります。しかし、人類がそうした認知や分類の方法を生み出しても、それはあくまで便宜上の分類であって、そうしなければならないわけではありません。

 もし、何らかの問題を解決することに興味があれば、必要に応じて学んだ内容をランダムに思い出すことができます。私にとって重要なのは、学派や学科とは何かではなく、問題を解決することそのものです。

 たとえば、私は14歳の時、ある疑問に夢中になりました。それは、対面では信頼関係を築くのに時間がかかるのに、オンラインゲームのチームなどでは、いくつかのキーワードが一致すると、たちまち親友のように意気投合し、よりパーソナルなことを共有し、その感情を利用して一緒に大きなものを作り上げることができるのはなぜか、という疑問です。学問上、これを「すみやかな信頼」(Swift Trust)と呼びます。

 こうした概念を学問の原理や理論にまで高めるには、どうすればこのすみやかな信頼をいつも容易に生み出すことができるか、と考えることが必要です。たとえば、ネット上のあるコミュニティにすみやかな信頼を生み出すためには、どのような空間を工夫して作ればいいのか。

 この問題を解決するためには、心理学やデザインなど、7〜8種類の異なる分野について学ばなければならないかもしれません。

 だから、私は特に何がどの学科であるかといった分類を気にしたりはしません。もし、ある星が自分の探求したい方向にあれば、その隣にある星を足して自分のための星座にすればいいのです。

何もない空間が価値を生む AI時代の哲学

アイリス・チュウ ,オードリー・タン

文藝春秋

2022年7月14日 発売

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