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《安倍元首相銃撃》「母親はつながりが切れない、縁が切れない」親族が明かす山上徹也容疑者(41)の母親への“葛藤”と“宗教2世”の深い苦悩「私たちには幸福追求権がない」

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 シングルマザーで統一教会に多額の献金を行っていた母親。祖父や親族の力を借りながら、奈良の地で新生活を送っていた。しかし山上容疑者が県内有数の進学高校の卒業を控えた頃、一家の支えだった祖父が他界。母親が祖父の会社を継いでいるが、その頃にはすでに経営は厳しくなっていたようだ。

高校時代の山上容疑者(知人提供)

会社は4000万円を超える負債を抱え、母親は自己破産

 ある信用調査会社によると、1996年度まで黒字が続いていた会社は母親が社長を引き継ぐ前年の1997年度には4000万円を超える負債を抱え、その後銀行からの融資も認められなくなった。2002年には母親が自己破産。2009年から2017年までは、統一教会側も連絡が取りづらい状態が続いたという。

「教会への入信以降、母親は会社の金を使いこみ宗教にのめり込んでいったとみられる。山上容疑者は大学進学を夢見ていたが経済的な事情から専門学校に進学。学費は夫側の親戚が工面している。その後、海上自衛隊員になった山上容疑者は自殺未遂をして病院に運ばれた。さらに追い討ちをかけるように兄が数年前に自殺している」(捜査関係者)

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 山上容疑者の親族は、兄をなくした山上容疑者の当時の様子を言葉少なにこう振り返る。

高校時代は応援団に所属していた(知人提供)

「(兄が亡くなったのは)8年くらい前。葬儀のときに泣きながら、『兄ちゃんアホやな何で死んだん。生きていればなんとかなるやろ』と。その言葉が忘れられません。悲しかったと思います」

 度重なる身内の死と、そこに向き合えず宗教にのめり込んでいく母親――。そこで山上容疑者が銃口を向けたのが、統一教会との蜜月関係が囁かれる元首相だったのだ。

「母親はつながりが切れない、縁がきれない」

 この親族自身、最近は山上容疑者らと会うことがほとんどなかったが、山上容疑者と母親については「2人は会っていると思う」と語っている。なぜ山上容疑者が母親に憎悪を向けなかったと思うかと聞いたところ、「それはやはり子どもと母親はつながりが切れない、縁がきれない」と呟いた。

 前出のXさんは「宗教2世の実態」をこう訴えている。

「例えば、交際相手との結婚を考えている2世の知人がいるのですが、相手は教会員ではないため、結婚できずに悩んでいます。統一教会は自由恋愛を厳しく禁じていますから、もし相手と結婚すれば、知人は両親との縁も切ることになってしまいます。ただ、彼の両親は心から信仰が彼の幸せにつながると信じている。だからこそ、なかなか決断できないでいるようです。

 2世の自助努力で解決するのはもはや難しく、まずは社会にこのような問題があることを知ってほしい。事件に便乗するような形で不謹慎と言われるかもしれませんが、それだけ追い込まれているんです。教会内部はほぼ“治外法権”。だから規制する法律や、精神的な虐待を取り締まる法整備などにつながってほしい。2世には普通の人が当たり前に享受できる幸福追求権がありませんから……」

 元首相の殺人という史上希に見る大事件には、宗教2世が抱える深く重い苦悩が底流していたのかもしれない。

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