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大谷が本当にすごくなるのはこれからだ

 各局アナウンサーとの質疑応答(なぜかプレスカンファレンスなのに活字媒体は1人も質問しなかった)が始まって、印象深かったのはこの5年間の成長と、二刀流の完成度についてコメントしたくだりだ。

「僕自身は、北海道は家と札幌ドームを往復している毎日が続いていたんですけど、本当に野球だけに没頭できた5年間だと思っています。その環境を与えていただいた球団の方とかファンの皆さんには感謝しています。自分が目指す方向にすごく成長できたんじゃないかと思います」

「やり遂げたという感情はないですし、まだまだ道の途中だなという感じなんですけど、ここに来ると決めたときは栗山監督をはじめ、ごく少数の人たちしかできると思って行動してくれていなかったんじゃないかと思います。そういう考えを持ってくれている人たちが僕のまわりにいたということは、僕にとってラッキーだったなと思っていますし、本当にそこがすべてだったなと思います」

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 現場で誰に聞いても同じ答えが返ってくる。大谷君は野球漬けの5年間を過ごした。僕は2015年のオフ、報知スポーツ大賞のセレモニー直後に一度だけ対談したことがあるんだけど、対談が終わったら都内の会場からまっすぐ鎌ケ谷の施設に戻って練習だった。目標を設定し、そこへ向かおうとするエネルギーがハンパなかった。札幌ドームの会見でも多くの人が感じたと思うが、頭がよく、自分の言葉を持っている。

大谷さよなら会見 ©時事通信社

 戦慄すべきことに大谷君は野球選手として未完成なのだ。本当にすごくなるのはこれからだ。札幌ドームを埋めた1万3千人のファンは、そしてテレビ中継や映像配信を通じて見守った更に多くの人はそれを知っている。

 2015年オフの対談のとき、プロで二刀流なんてやれっこないと広言した評論家やコメンテーターに、ざまみろって気持ちはないですか?、と尋ねた。大谷君の答えは「それは僕が言うことじゃないのかなと思います」だった。彼は大リーグに挑戦するんじゃない。大リーグで二刀流に挑戦するのだ。これからアメリカ人の野球観を変えようとしている。胸のすく想いだ。グッドラック! どこに行っても応援している。

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