「毎年参加されている『全国高校生 手話パフォーマンス甲子園』でのお姿です。佳子さまは若い世代へ『一緒に手話の輪を広げよう』と積極的にメッセージを届けていらっしゃる。開会式のご挨拶では、会場に集った大勢の高校生を前に、いつも非常に丁寧な手話で語りかけておられます」
大会前夜には、関係者による交流会が開かれる。佳子さまも学生をはじめ、様々な人の輪に入り、和やかにお話されていたという。
「手話パフォーマンス甲子園では、佳子さまが、ろうの人たちとも通訳を介さずお話しされている様子をお見掛けします。聴者にとって難しいとされる手話の読み取りができなければ、このように自由に話すことはできません。日頃からしっかりと聞こえない人と語り合うための手話を学んでおられることがわかります。
手話は大きく分けて、ネイティブのろう者が話す、日本語とは違った文法を持つ『日本手話』と、音声の言葉に合わせて手話の単語を並べていく『音声(日本語)対応手話』 の2つがあります。佳子さまは、式典などの壇上では、音声の言葉を話しながら手話を同時に表現されています。これは、聞こえない人に手話を見てもらうとともに、声を付けることで、それが何の話なのか一般の聞こえる人にも、同時に伝わる方法だからだと思います。
しかし、ここにも佳子さまならではの努力と工夫が込められているのがわかります。 手話は空間を使う視覚言語で、言葉を置く(表す)位置により、主語や目的語が決まってくるのですが、佳子さまは、音声で話しながら、この位置関係などを適切にわかりやすく、表現されているのです。
声で話しながら、ここまで丁寧に手話を表現していくには、日本語と手話の2つの言語の特徴を、それぞれにしっかり押さえていなければ、 なしえません。 手話には表現のリズムがあり、それを音声と合わせて話す呼吸の間も、佳子さまは、年を追うごとに自然になられ「ご自身の言葉」として、表現されているのが伝わってきます。
聞こえない人の手話が読み取れ、豊かに会話するお姿。伝えたいイメージを、手で鮮やかに描き出しておられるご様子。これは、長い間、手話に地道に取り組みつづけていらっしゃることの証左に他なりません。何よりも『心を伝えたい、皆さんと繋がりたい』というお気持ちあってのことでしょう」
手話パフォーマンス甲子園は、今秋9月24日の開催で10周年を迎える。本大会と共に歩み、手話に磨きをかけてこられた佳子さま。記念すべき年に、どのようなお心を表現されるのか。その「手」が描く言葉を見つめたい。
撮影 JMPA