もしかしたら、我々が見てきたあの恐ろしく厳しい先生たちは、その期待に応えようとした結果生まれた可能性がある。
ある有名振付師の方の著作で「(テレビ番組で)前後の流れを無視して緊張感のあるシーンだけ切り取られてしまった」という内容を見かけたこともある。
そういった「怖い先生像」を見てきた下の世代が今実際に“先生”となり、それをあるべき姿だと信じているのであればとても危ういことだと思う。
また、一般企業においては、パワーハラスメントの再発防止策として研修・講習会が積極的に行われるようになってきたが、芸能界ではそういった制度が整っていない。そんな「業界のガラパゴス化」も大きな課題だと思う。
さらにいえば、芸能界における“先生と生徒”は“上司と部下”ではなく、どちらかといえば生徒はクライアントにあたる。それによって生じる「お願いされている」という感覚も、先生という立場に溺れてしまいやすい要因のひとつなのかもしれない。
ファンが“推し”のためにできること
ちなみに、「アイドル業界のパワハラ問題」が明るみになるたびに、私のSNSにはこんなメッセージが数多く届く。「ファンは推しのために何ができますか?」と。
まず真っ先に心がけるべきは、けっしてセカンドレイプ(二次加害)に加担しないこと、そしてそれを許さないことではないだろうか。
勇気を持って公表した人が、被害者であるにもかかわらず、第三者から心ない言葉を浴びせられたり、矛先を向けられるというのは絶対にあってはならない。
そして忘れたくないのが、「人はルールよりもムードに弱い」ということ。
もし公表された問題に対して事務所や運営がうやむやにしたり、そのままやり過ごそうとした際には、きちんと説明がなされるまでけっして許さないことはとても大切だ。ひとりでは微力だとしても、連帯すれば必ずそれはいつか空気感になる。
「ムード作り」は、ファンが推しの労働環境を改善させるためにすぐに取りかかれる、数少ない貴重な手段ではないだろうか。