F3レース史上初となる女性チャンピオンに輝いたJuju(17)。優勝後に感じたモータースポーツ業界の“壁”とは?(全2回目の2回目/前編を読む)

女子高生レーサーとして話題を集めるJuju(撮影=Tatsuya ENDOH/遠藤樹弥)

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「17歳の女の子が優勝してのけたなんて、もしJujuがフランス人やイギリス人だったら、今ごろF1のチームから声がかかっているでしょうね。育成枠に入れてもらえて、そうすればこの先はもう何も心配いらない。ただ環境のことは言ってもどうにもなりませんから、今の状況を受け入れて、また一歩一歩進んでいくしかない」

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 父が吐露する通り、Jujuの前には厚い壁が立ちはだかっている。F1界のスーパースター、アイルトン・セナが、人種差別のなかで身を削りながら栄光を掴み取ったように、モータースポーツは未だ”政治と金の世界”だ。

モータースポーツは未だに“政治と金の世界”だ(撮影=Tatsuya ENDOH/遠藤樹弥)

 Jujuは「去年はもっとも屈辱的な1年でした」と静かに言葉を紡ぐ。

「日本でレースをしていたら一生出くわすことがなかったような壁にもぶつかりました。イギリス主催のレースでは、同国のドライバーだけに優れたマシンが提供されて、私はまともな車輌に乗ることすらできなかった。必要なパーツを私たちのチームにだけ売ってもらえなかったこともあります。これでは結果が出るわけがないと訴えても『あなたは女の子だから、遅くてもしょうがないよね』と一蹴される。そんな言い分や政治的なコントロールが通用してしまう世界なんです」

優勝後に感じた“壁”について、Jujuは静かに言葉を紡いだ(撮影=Tatsuya ENDOH/遠藤樹弥)

 そして圧倒的な男社会でもある。男女混合のレースといえど、レギュレーションは男性基準だ。重量規定においても、基準に達していないドライバーは、マシンに不足分の重りを積まなければならない。しかし、例えば「80kg」がボーダーだとして、男性はその分の筋力を身につけられる。一方、Jujuがそこまで体を育てられるかといえば、まず不可能だ。

「マシンはブレーキを踏むのにも片足で100kg以上の力をかけないといけませんし、ステアリングもものすごく重い。女性は筋力でかなり不利な上に、重りまで積んで走っているんです。『ヘルメットを被ったら男も女も関係ない』と言いたいですけど……なかなか簡単ではないですね」