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「肺NTM症」をご存じですか? 原因となる「非結核性抗酸菌」は私たちの身の回りに存在しています

「肺NTM症」をご存じですか? 原因となる「非結核性抗酸菌」は私たちの身の回りに存在しています

2023/12/14
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近年、患者数が増加している感染症「肺NTM症」をご存じですか? 原因となる「非結核性抗酸菌」は土の中や水回りといった私たちの身の回りに存在しています。

肺NTM症は、中高年女性に多い呼吸器感染症

紺野 肺NTM症という言葉を初めて聞いたのですが、近年増加傾向にあるそうですね。どんな病気なのでしょう。

長谷川 NTM(非結核性抗酸菌)が原因で発症する呼吸器感染症の一種です。NTMは結核菌の仲間ですが、結核とはまったく別の病気で、人から人へ感染しないのが最大の違いです。

紺野 ということは、いったいどこで感染するのですか。

長谷川 NTMは水や土壌などの自然環境や、台所や浴室など生活環境の中にあたりまえに存在する菌で、誰もが吸い込んでいますが、ほとんどの人は感染し肺NTM症を発症することはありません。

肺NTM症とは?
肺NTM症 は、NTMという菌が肺に感染することで発症する慢性の呼吸器感染症。初期は無症状のこともあるが、体重減少や長引く咳や疲労感などが起こるようになり、病気が進んでくると咳や痰がひどくなり、血痰や喀血(かっけつ)、体重減少などがみられることも。

紺野 なるほど、少し安心しました。では、どういう人がかかりやすいのでしょう。

長谷川 40代以上の女性で、それもやせ型の女性に多いんです。

紺野 え、まさに私ですね!肺NTM症にかかるとどんな症状が現れるのですか。

長谷川 初期は自覚がないことも珍しくありませんが、血痰が出ることがあります。病状が進むと体重が減少したり、咳や痰が出てきて、酸素吸入が必要になることもあります。

紺野 なかなか深刻な病気ですね。原因となる菌は生活環境の中にあるということですが、どのような対策が有効なのでしょう。

長谷川 気をつけたいのは追い焚き機能のあるお風呂です。配管の中に菌がいることがあるので、追い焚きをやめ、定期的に掃除をして乾燥させ、清潔に保つようにしてください。

紺野 そうなんですか。 では、シャワーを浴びるだけなら問題ないのでしょうか。

長谷川 いえ、シャワーヘッドの中で菌が増えることがあるので、定期的に掃除してください。

紺野 なるほど、やはり清潔に保つことが大切ですね。お風呂掃除やガーデニングの時にマスクをするのもいいかもしれません。

長谷川 はい。そして、症状を深刻化させないために重要なのが、早期発見です。

早期診断・早期治療で適切な治療を受けることが肝心

紺野美沙子氏 女優 Actress
慶應義塾大学文学部卒。女優として活躍する傍ら、UNDP親善大使としても活動中。2010年秋から「紺野美沙子の朗読座」を主宰。元祖スー女としても知られ横綱審議委員である。
紺野美沙子氏 女優 Actress
慶應義塾大学文学部卒。女優として活躍する傍ら、UNDP親善大使としても活動中。2010年秋から「紺野美沙子の朗読座」を主宰。元祖スー女としても知られ横綱審議委員である。

紺野 自覚症状は現れにくいというお話でしたが、どうすれば発見できるのでしょう。

長谷川 人間ドックや検診で見つかることが多いのでぜひ年に1回は受診してください。

紺野 肺がん検診のレントゲン検査でもよいのですか。

長谷川 レントゲン写真では見つかりにくいところに影が出ることも多いので、できればCT検査の方がよいです。そして、咳や痰がしばらく続いてどうもすっきりしない時には、近隣の呼吸器内科を受診してみてください。

紺野 私もですが、中高年になると咳や痰が続いていても「きっと風邪が長引いているだけ」と思いがちなので注意が必要ですね。もし、画像で異常が見つかったら、どうやって確定するのでしょう。

長谷川 痰を何回か取って、その中にNTMがいるかどうかを調べます。菌が見つかっても、病気のタイプや症状の程度によってすぐに治療とはならないこともあります。ただし、治療が始まらなくても、6か月に1回は定期的に受診して病状に変化がないかを調べる必要があります。

紺野 そこで油断すると重症化することもあるのですね。

長谷川 はい。この病気は一度かかると完治は難しく、特効薬もありません。ただし、最近は新しい治療法も出てきたので、きちんと受診を続けていれば必要以上に恐れることはありません。

長谷川直樹氏 慶應義塾大学医学部 教授 Doctor
慶應義塾大学医学部卒業。スタンフォード大学MC呼吸器・クリティカルケア内科、慶大呼吸器内科、同大感染制御センターを経て同大感染症学教室教授。肺NTM症の第一人者。
長谷川直樹氏 慶應義塾大学医学部 教授 Doctor
慶應義塾大学医学部卒業。スタンフォード大学MC呼吸器・クリティカルケア内科、慶大呼吸器内科、同大感染制御センターを経て同大感染症学教室教授。肺NTM症の第一人者。

紺野 これほど身近なのにまだまだ知らない人も多いはず。こういう病気があると知ることは大切ですね。他にも気をつけることがありますか。

長谷川 どんな病気もそうですが、睡眠とバランスの良い食事が基本です。そして筋力を保持することも重要です。

紺野 そうそう、適度な運動は必須ですね。私も心がけています。そしてなるべくストレスをためないこと!

長谷川 そうですね。やはり、毎日を笑いながら楽しく過ごすことは健康と大いに関係があると感じています。

紺野 最近、年齢のせいか早寝早起きになってきたんですが、ぐっすり眠れるだけで幸せだし朝日がきれいだと嬉しくなる。身近なことに感謝して毎日を上機嫌で過ごすのが健康の秘訣かもしれませんね。

こんな症状、ありませんか?
●長引く咳・痰
●血痰・喀血
●体重減少
●息切れ・呼吸困難
●胸が痛い
●疲れやすい
●発熱
●寝汗

肺NTM症をチェック!
どんな病気? 何に気をつけたらいいの? そんな気になる情報をわかりやすくまとめたのが、インスメッド合同会社の「肺NTM症講座」。生活環境に対するアドバイスや検査についてなど、ぜひ確認を。相談に乗ってくれる医療機関を調べるなら「病院検索」も便利。
​詳しくは、こちらから。

提供:インスメッド合同会社

photo:榎本麻美
hair & make-up:冨永朋子(アル―ル)
styling:石田純子(オフィスドゥーエ)ジャケット〈DUE deux〉 ピアス〈アジュテ ア  ケイ 京屋〉