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極め付きは11月公開『マーベルズ(The Marvels)』の不発だ。大手映画情報サイト「IMDb」傘下の興収情報サイト「ボックスオフィスMojo」によると、世界4000館以上で封切りを迎えた11月のオープニング成績は、4611万ドルに留まった。10億ドルの大台がはるか彼方に霞む惨状を、英ガーディアン紙は「完全な大失敗」であったとみる。

写真=AFP/時事通信フォト 2023年10月16日、パリ東のマルヌ・ラ・ヴァレにあるディズニーランド・パリの『眠れる森の美女』の城と、ミッキーマウスとミニーマウスの耳をつけた来園者 - 写真=AFP/時事通信フォト

一方、ディズニー配給のピクサー新作『マイ・エレメント(Elemental)』は収益ラインを確保。また、人気作続編の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3(Guardians of the Galaxy Vol. 3)』は唯一といえる大成功を収めた。後者は10億ドルを射程圏に入れる8億4500万ドルと健闘したが、全体の落ち込みを相殺するには至らなかった。

『バラエティ』誌は、ディズニーの黄金期は2019年であったと指摘。長く続いたスーパーヒーロー・シリーズを大団円へ導く『アベンジャーズ/エンドゲーム(Avengers: Endgame)』や、1シーンを除き完全3DCGで名作をリメイクした『ライオン・キング(The Lion King)』を筆頭に、実に7作品もが10億ドルを突破していたと振り返る。苦戦の今年とは雲泥の差だ。

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「ディズニープラス」独占公開の落とし穴

不振連発のディズニーに、同社の方向性と戦略に対する懸念が高まっている。アナリストたちは、パンデミック中に誤った戦略を採用したことなど、複数の要因を指摘する。

ディズニーはパンデミック中、劇場への足が遠のいたことから、最新作を直ちに同社のストリーミング・サービス「ディズニープラス(Disney+)」で独占公開する戦略を採った。外出控えが何年続くとも知れなかった当時、劇場依存からの脱却は、やむを得ない方針だったともいえる。

だが、これが映画の“安売り”につながった。米調査企業のアナリストは、『バラエティ』誌に対し、映画鑑賞という体験価値の切り下げにつながったと指摘する。業界全体が「短期的思考」に走った結果、観客がストリーミングにより慣れ親しみ、大スクリーンへの関心が低下したとの分析だ。