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観客の「スーパーヒーロー疲れ」も一因

その半面、スタート地点となった2008年の『アイアンマン(Iron Man)』公開から実に15年が経過したいま、肥大化したバックストーリーに観客は疲れを感じている。映画・ドラマ情報誌の米スクリーン・ラントは、宿敵との長い争いに一定の結末が描かれた2019年黄金期の『アベンジャーズ/エンドゲーム』を最後に、カジュアル層はMCUへの興味を失ったと指摘。量産されるヒーローにより、観客は「スーパーヒーロー疲れ」に苛まれていると論じている。

作品テーマの不在も問題だ。MCU作品群で「史上最もディズニーらしい」と評される『マーベルズ』だが、決して褒め言葉ではない。ディズニーのアニメーション作品で好評のミュージカルシーンをマーベル世界に持ち込んだ結果、本作には「大胆だが見当違いな一歩」との酷評も寄せられている。

本家ディズニーブランドでも、ノイズが問題だ。100周年記念の最新作『ウィッシュ』は、ファンサービスとばかりに、ディズニーが生み出したありとあらゆるアニメーション作品のオマージュを盛り込んだ。ガーディアン紙は、『ウィッシュ』は100年分のディズニー・アニメーションのイースター・エッグ(隠し要素)を織り交ぜようとした結果、テーマとなるメッセージを伝えるのに苦労する雑然とした物語になった、と不満を述べる。

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娯楽作品なのにお説教臭い…ファミリー層に響かなくなった

いわゆるポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)への積極姿勢も、少なくとも興行収入の面では、現在のところ良い結果を招いていないとの批判がある。ポリコレは、差別表現や不快感のあるコンテンツを生まぬよう意図した、人種・宗教・性的指向などにおける公正な配慮を指す。

ディズニー作品の例では、原作で白人だった主役を実写版で黒人女性に変更した『リトル・マーメイド』や、有色人種を含む3人の女性を主役に迎えた『マーベルズ』などが論争を呼んだ。反発心の強い特定のネットユーザー層から反感を買っているほか、本来ディズニーがターゲット層としているファミリー層にも、施策のねらいがいまひとつ響いていないとの見方がある。