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CNBCニュースによると、ディズニーのCEOに返り咲いたボブ・アイガー氏も、おおむねこの分析を追認している。ニューヨーク・タイムズ紙主催のイベントに出席したアイガー氏は、家庭での鑑賞環境が向上していると前置きし、次のように続けた。

「そして、考えてみれば、これはお買い得です。ディズニープラスのストリーミングは、月7ドル(日本では月990円~)で視聴できます。家族全員で映画を観に行くより、ずっと安い」「だから、家から出て映画館に足を運んでもらうためには、ずいぶんとクオリティのハードルが上がったように思います」

映画館の大画面より、スマホの小さな画面で十分

パンデミック中、劇場公開のフェーズを飛ばし直接ストリーミングで配信されたディズニー作品には、2020年の実写版『ムーラン(Mulan)』などがある。所有するピクサーブランドからは、音楽教師が不思議な世界へ迷い込む2020年の『ソウルフル・ワールド(Soul)』、良い子を演じ続けた少女の身体が異変に見舞われる同年の『私ときどきレッサーパンダ(Turning Red)』、海の種族がイタリアの港町を冒険する2021年作品『あの夏のルカ(Luca)』など、良作が続々と映画館公開を断念。安価なストリーミングでの封切りという憂き目に遭った。

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ディズニープラスで公開となったこうした作品の一部には、一般的な劇場作よりも質で劣るものがあったと指摘される。しかし、それを差し引いても、ディズニープラスならばわずか月7ドル払うだけで、家のリビングに集まった家族全員が見放題だ。圧倒的なコストパフォーマンスに誘導され、多くの観客は大スクリーンへ足を運ぶ意義を見失った。

一方、ヒーロー作品で人気のマーベルブランドでは、長く引っぱりすぎたストーリーが重荷となった。「アベンジャーズ」「アイアンマン」「スパイダーマン」などそうそうたるシリーズがそろい踏みするマーベル作品群は、「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」と呼ばれる独自の世界観が複雑に交錯する。時間軸とキャラクター同士の関係性が作品を超えて作用し合うストーリーラインは、予想を超えた連携と深みでファンに嬉しい驚きを与えた。