有愛の転機となったのは、21年夏の宙組公演「シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-」。彼女が新人公演で抜擢されたのは、ホームズの相棒であるワトスンの恋人・メアリー役だった。本公演でその役を演じたのは、14年に100期生として39人中5番の好成績で入団した天彩峰里(あまいろみねり)。事件が起こったのは21年7月20日の新人公演の直前のことだ。
「天彩が有愛に対し、『前髪の作り方を教えてあげる』と言い、高温のヘアアイロンを彼女の額に押し付けたのです。有愛はショックを受け、新人公演のときはギリギリの精神状態で出演していたといいます」(宙組関係者)
有愛は体調不良を理由に、同年の秋冬公演「プロミセス、プロミセス」を全日程休演している。
「有愛が親族に相談し、親族が怒ってプロデューサーに話したことで劇団が知ることになったのです。ところが、有愛は泣きながら『天彩さんが怖いから大事にしたくない』と訴えた。さらに、天彩は『私、そんなことしません』と事実無根を主張したため、事件はなかったものとして蓋をされたのです」(同前。改めて劇団に問い合わせたところ「前髪づくりを手伝った際、『誤ってあたってしまった』と両当事者からの証言を得ております。『押し付けた』事実はありません」と回答)
口癖のように『事実無根』と繰り返して隠蔽
小誌は今年2月9日号でこのイジメ疑惑を報じた。すると、有愛は「天彩さんに申し訳ないことをした」と話し、みずからを責めたという。実は、この一連の経緯にこそ宝塚の“病理”が横たわっているのだ。
「劇団は不都合な出来事は一切公表せず、口癖のように『事実無根』と繰り返して隠蔽。そのまま立ち消えになるのが、いつものパターンです。生徒たちは同期愛が強く、『同期が分かってくれているならいい』と耐え忍ぶ。大事にすると、プロデューサーや制作部長から干されてしまう。役が欲しい生徒たちは、宝塚ファンである親のためにも健気に耐えるしかない」(同前)
劇団の隠蔽体質が垣間見えるエピソードは、そればかりではない。小誌は、今年1月19日号で「宝塚娘役を追い詰めたトップ 真風涼帆の陰湿イジメ」と題した記事を掲載。宙組トップスター(当時)の真風涼帆(まかぜすずほ)が、相手役だったトップ娘役の星風まどかを「下膨れ顔」「デブ」などと罵倒し、1時間の正座を強いていたことを報じた。その顛末を知る俳優が、匿名を条件に打ち明ける。