創業家は買収交渉の最中に豪華な別荘を新築していた
場所は軽井沢。かねてからビッグアセット名義で保有していた別荘に隣接する形で、床面積約1100平米に及ぶ建物を昨年10月31日に新築していたのだ。現地に足を運ぶと、一帯が高さ数メートルの柵や木々で“目隠し”されている。その中に、チャコールグレーの目新しい別荘が佇んでいた。近隣住民に尋ねると、
「以前はオレンジの幕が敷地を囲っていましたね。施工会社が昨夏、挨拶に来て『工事は終わったけど、家具の搬入があるからその音がすると思います』と。その後、幕も取られ、無事別荘は完成したようです」
だが、昨年10月から12月と言えば、伊藤忠がスポンサーとして名乗りを上げようとしていた時期。つまり、買収交渉の最中に、創業家は豪華な別荘を新築していたことになるのだ。
兼重氏から質問状の回答は得られず
更に、登記簿を見ていくと、昨年12月28日付で、軽井沢や各地の別荘などを担保に、東京スター銀行から、年利6.08%で計25億円の借入をしていた形跡も窺える。その後、今年3月29日付で担保権の設定は解除されていた。
「メインバンクも兼重氏に対しては冷淡だった。他方で、日経新聞によれば、創業家は債務返済などに備え、100億円程度を拠出する方向だといいます。買収交渉を決着させる過程で、緊急の資金手当てが必要だったことから、年末に借入を図ったのでしょう」(銀行関係者)
兼重氏に別荘新築などについて訊くべく、目黒の豪邸を訪ね、質問状も投函したが、応答はなかった。
伊藤忠広報に尋ねると、創業家を利するスキームではないなどとしたうえで、
「創業家が一個人として過去に行っていたことについては、当社としてコメントする立場にございません」
せっかく建てたビッグな新別荘だが、兼重氏が寛げる日はまだ当分先のようだ。